スポーツ選手と入院患者、「栄養」が重要な共通点!

廃棄食品が栄養の源に
スポーツ選手は呼吸量が多く、体に取り込まれる酸素量が多いため、体が酸化してDNA破損物質が増えます。その結果、パフォーマンスが低下して筋肉痛が起こりやすくなります。こうした体の酸化を防ぐために、栄養面から多様な研究が行われています。調査の一つとして、キャビアになる卵を取った後に廃棄されるチョウザメの身を選手たちに食べさせて血液検査をしたところ、DNA破損物質の排出が減少し、疲労が抑制されました。このことからチョウザメの身に含まれるタンパク質やビタミンD、DHA、EPAなどの複合的な栄養が選手の体に影響していることがわかりました。
筋トレで術後せん妄を予防できる!?
栄養面の研究は病院の入院患者に対しても行われています。例えばがんの化学療法は正常な細胞にもダメージを与えてしまうため、食欲がなくなり、体重が減少してしまいます。治療には体力が必要なので、タンパク質など複合的な栄養を取ることが大切であり、そのために管理栄養士による栄養面のアプローチが行われています。
また、人によっては手術後に麻酔が切れると、意識の混乱が生じる「せん妄状態」に陥ることがあります。せん妄状態に陥る人は舌と足の筋肉が弱っている傾向にあります。せん妄状態にならないように、特に高齢者は入院する前から自宅で筋力をつけるなど、栄養面から派生した対策も研究されています。
付加価値にもつながる研究
スポーツ選手も入院患者も、栄養がきちんと取れないと体力がなくなります。スポーツ選手はけがや不調の原因につながり、入院患者は治療を完遂することができなくなってしまいます。両者は全く違う状況ですが、栄養が重要であることは共通しています。こうした多角的な栄養学の研究は、その人の状態をよくするだけではなく、生活の質を上げることや、廃棄されるはずのチョウザメの身に栄養価値を見いだしてSDGsにもつながります。さまざまなことに「付加価値」をつけることも期待されているのです。
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南九州大学 健康栄養学部 管理栄養学科 講師 原口 直樹 先生
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