講義No.15545 教育 児童学

幼稚園と小学校の間にある「見えない壁」を壊す

幼稚園と小学校の間にある「見えない壁」を壊す

幼稚園と小学校の「すき間」を見つめる

日本では、幼稚園と小学校は別の組織で、教員免許も違います。しかしアメリカでは、1920年代から幼稚園が小学校の「1年生の1つ下の学年」として組み込まれるようになりました。現在は、州によっては「幼稚園~小学校3年まで教えられる免許」と「1年生~6年生までの免許」が設けられています。年齢や学校の区切りではなく、子どもの成長に合わせて、その時期に合った専門性を持つ教師が教えるという柔軟な仕組みが、100年前のアメリカで議論されていたのです。

なぜ日本ではうまくつながらないのか?

日本でも近年、幼稚園と小学校の教育をスムーズにつなげようと取り組まれていますが、行事の交流や教師同士の話し合いにとどまっているのが現状です。小学校の教師が幼稚園を参観しても「どこを見ればいいのかわからない」と戸惑うこともあります。というのも、小学校では教室で席について教科ごとに集団で授業を受けるのが基本ですが、幼稚園では子どもが一人ひとり自由に動きながら遊びの中で学ぶのが基本です。幼稚園と小学校では、日々の教育の形が大きく異なります。この前提の違いが、連携の難しさにつながっています。

「その時期」に合う学びをつくる

子どもの学びは、年齢で区切れるものではありません。成長のタイミングに合わせて「ちょうどいい」教師の関わり方が必要です。アメリカでは、幼稚園と小学校の間にある「その時期ならではの教育」をつくろうとしてきました。幼児教育の考え方を小学校に取り入れたり、その逆も考えたりと、さまざまな工夫がなされています。日本でも成長に合わせて、小学校高学年での教科担任制など、制度が少しずつ変わり始めています。入学したばかりの1年生が戸惑わずに学べるように、子どもの育ちに合わせた制度の見直しが今、求められています。
教育の仕組みを見つめ直すのも、大学での研究の役割です。なにげなく通っていた学校にも、深くて面白い問いが隠れているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

盛岡大学 文学部 児童教育学科 助教 奥田 修史 先生

盛岡大学 文学部 児童教育学科 助教 奥田 修史 先生

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教師教育、学校経営、教育学

メッセージ

大学で教育学を学ぶなら、あなたが今まで受けてきた学校教育の経験は貴重な材料になります。講義やテキストで教育の理論に触れたとき、「あの授業のことか」と思い出すはずです。教育は誰もが語れる分野だからこそ、専門的な視点を持つことが大切です。今頑張っている学校生活のすべてが、将来の学びの基盤となっています。大学は好きなことを徹底的に学べる場所です。興味のある分野を見つけて、ぜひその世界に飛び込んでください。

盛岡大学に関心を持ったあなたは

盛岡大学は、文学部・栄養科学部の2学部5学科からなる総合大学です。
文学部は、文学・語学・経済学・教育学をはじめ幅広い学習分野を網羅し、各学科の特色を活かした専門性の高い知識を身につけることができます。評価の高い教員養成は、地域の教育委員会と連携した独自の教育プログラムを通して高い実践力を育みます。
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