「褒めて伸ばす」だけじゃない 感情が深める学びの力

どのように知識を獲得するか
人は、一人で勉強するだけでなく、誰かとのやりとりによって学びを得ることが多くあります。例えば友だちや先生との会話を通じて、自分の考えに新たな視点が加わったり、間違いに気づいたりするといった経験から得られる学びです。このやりとりの中で、大きな役割を果たすのが「感情」です。感情が思考を動かし、学びを深める原動力になるのです。
お買い物ゲームで実験!
この感情と知識獲得の関係に迫った実験があります。実験では小学3年生が、様々なお店が書かれた地図をもとに「5つのお店を最短で回るルート」を考える課題に取り組みました。まず一人でルートを考えた後に、大人と一緒に話し合いながら再挑戦し、最後にまた一人で課題に取り組んでもらいます。大人から子どもへの声かけは、子どもの考え(思考)を「すべて褒める」「前半は否定し後半は褒める」「前半は褒めて後半は否定する」の3パターンで行われ、子どもたちの課題の取り組み方、それに伴う課題成績(知識獲得)の変化が観察されました。
感情の「組み合わせ」がカギ
知識獲得が進んだのは子どもの考え(思考)を「すべて褒める」パターンでした。褒められた子どもには、ポジティブ感情が高まって他者の意見を受け入れやすくなり、課題に積極的に取り組む傾向が確認されました。また、「前半は否定し後半は褒める」パターンでは、初めにネガティブ感情が生じたものの、後半で褒められることで「自分の考えを見直す行為」が確認されました。否定された悔しさが原動力となり、「もっと良い方法を考えよう」という意欲につながったのです。一方で「前半は褒めて後半は否定する」パターンでは、後半の否定によりせっかく生じたポジティブ感情が失われ、学習への意欲も低下する傾向が見られました。
実験からは、ポジティブ感情だけでなくネガティブ感情も適切に組み合わせることで、子どもの思考を深めるきっかけになることが示されました。教育の現場においても、子どもへの最適な声かけへのヒントになることが期待されます。
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