音楽を豊かに味わうための「聴く力」を育てるには?

音楽を「聴く力」とは?
私たちは日ごろ、さまざまな音や音楽を意識の有無を問わずに聴いています。音楽を「聴く力」というと「絶対音感」のような音の高さを正確に捉える能力を思い浮かべるかもしれません。しかし、ここでいう「聴く力」には、音の強弱や抑揚、テンポの揺れや音色の違いといった多様な要素の聴き取りも含みます。自分の耳で聴き取ることのできる要素が増えるほど、音楽の楽しみはより幅広く、奥深いものとなっていくでしょう。
それでは、「聴く力」を育てるにはどうすれば良いでしょうか。
さまざまな音に親しむことから
20世紀に活躍した音楽教育家のエドガー・ウィレムスは、乳児がいつの間にか母語を話すようになるプロセスに着目した音楽教育を構築しました。このため、楽譜の読み書きや楽器の演奏から始めることはありません。
まず、さまざまな音を浴びるように聴き、親しむことから始まります。音の高低や強弱を体や声で表現したり、即興的な歌を模倣したりする中で耳を育てていきます。その後、楽譜の読み書きも学び、ようやく楽器に触れることができます。
なんと時間のかかる教育法だろうと思うでしょうか。音楽を享受するためには誰しも「聴く」ことから逃れられません。その意味で、「聴く力」から育てていこうとするこの教育法は「急がば回れ」のようにも思われます。
表現の「手段」としての楽器
日本では、ピアノなど特定の楽器を始めることが音楽との出会いとなる場合が多いため、まずはこの状況の中で先述の教育法を部分的に導入することをめざした研究が行われています。
例えばピアノのレッスンの中で、ビーズなどさまざまな素材が入った複数の小箱を鳴らして音を聴き分けるクイズの時間をもつと、子どもたちが楽しみながらいつもより集中して音を聴く様子が見られました。
楽器は音楽を表現するための「手段」であり、目的ではありません。学習者自身が主体的に「こんな音を奏でたい」とイメージをもち、そのために必要な技能を身につけていくような教育の展開が求められるのです。
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