情報機器に欠かせない! 電波信号を取り出すフィルタ回路

情報機器に欠かせない「フィルタ」
現代の生活は、電波(電磁波)を使った情報機器に囲まれています。Wi-Fiでインターネット通信をしたり、ブルートゥースで機器同士を接続したり、交通系ICカードで清算したりと、すべてが電波で送られる信号を受信して電気信号に変え、プログラム、アプリによって計算を行うことで成り立っています。
こうしたことができるのは、機器の中の電子回路や電子部品のおかげです。特に、空間中を飛び交うさまざまな周波数の電波から、必要な電波を抽出する「フィルタ」という回路は、通信機器の小型化や高性能化が求められる中で、重要な研究対象なのです。
回路パターンの進化が性能を左右する
フィルタは「キャパシタ」「インダクタ」といった、電気をためたり流したりする部品で構成されます。その性能はそれらをつなぐ回路パターンによって変わるため、小さなスペースにいかに効率よく回路を配置するか、パターン(模様)をどう作るかが重要です。現在、Wi-Fiやブルートゥースの周波数を選別する世界最小の回路は、手作りの試作品で5ミリ四方程度まで小型化できています。基板上に金属の線をプリントして微細な回路を作り上げる印刷技術も進化しているため、実際の製品ではさらに小さくできると考えられています。
ICチップを使わないカードの開発
現在、交通系ICカードなどの「RFIDタグ」において、ICチップやインダクタを使わない回路の開発が進められています。そのカギは、フィルタの中にある「共振回路」の改善です。フィルタは、電波が共振を起こして信号が増幅される現象を利用していますが、共振をうまく制御できる回路が開発されたことで、チップレス化が可能になりました。
ICチップが不要になれば、セキュリティや扱える情報量など、多くの課題が解決できると考えられています。また、希少といわれている半導体材料の供給不足に左右されないというメリットもあるため、注目が集まっています。
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電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 電子情報学プログラム 教授 和田 光司 先生
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