人工光合成が拓く、カーボンニュートラル社会への道

光合成を人工的に再現
植物は、光合成によって二酸化炭素と水から酸素と糖を作り出します。この仕組みを人工的に再現できれば、環境にやさしい技術として大きな可能性を持つはずです。現在、工業的に二酸化炭素を反応させるには高温高圧をかける熱触媒が必要で、膨大なエネルギーを消費するほか、反応の途中で再び二酸化炭素を発生させてしまうという課題があります。そこで、太陽光に反応する半導体材料を使って、熱ではなく光のエネルギーで化学反応を起こす光触媒技術が研究されるようになりました。特に水を分解して水素を得るクリーン水素の生成は、すでに多くの企業が取り組む応用分野へと広がっています。
反応効率の高い光触媒へ
さらに目標とされているのが、光触媒により二酸化炭素から別の化学物質を作り出す技術です。例えば、二酸化炭素をメタノールに変換できれば、再生可能エネルギー由来の化学燃料として活用できます。しかし、現状使えているのは、太陽光のうち3%しかない紫外線だけで、効率の面で大きな課題があります。今後は、太陽光の大部分を占める可視光や近赤外光でも反応を進行させる触媒の開発が必要です。また、副生成物が多く発生してしまう点も課題であり、目的の化学物質だけを効率よく反応させる工夫も求められています。
原子レベルの設計
こうした課題に対して、光触媒となる半導体物質を原子レベルでデザインし、効率よく反応が進む触媒物質の開発研究が進んでいます。触媒が実際に反応を起こすのは「活性点」と呼ばれるごく一部の領域だけです。その活性点の構造を緻密に設計することで、エネルギーロスを最小限に抑え、狙った反応をより確実に引き起こすことができるのです。この技術が実用化されれば、二酸化炭素を有用な資源として活用できるようになり、カーボンニュートラル社会に大きく近づくことになります。今は「悪者」とされがちな二酸化炭素が、未来では貴重な原料として私たちの暮らしを支える存在になるかもしれません。
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