消えた診断法が日本で復活! 子宮体がん細胞診の挑戦

消えた診断法が日本で復活! 子宮体がん細胞診の挑戦

世界から消えた子宮体がん細胞診

子宮の胎児を育てる部分を子宮体部と言い、この部分に発生するがんを子宮体がんと呼びます。子宮体がんは20代でも発症することがありますが、早期発見できれば子宮を残して妊娠の可能性を守ることができます。
体に負担の少ないがんの検査方法として、細いブラシで細胞を採取して悪性かどうかを判定する細胞診があります。しかし、子宮体がんの細胞診は、1980年代に「精度が低すぎる」という理由により、世界中で使われなくなり、子宮の組織を大きく削り取る「掻把(そうは)」という方法が採られてきました。

復活ののろしは日本から

細胞診の精度が低かった原因は、ホルモンバランスの乱れによる出血時に、がん細胞とそっくりな細胞が出現し、見分けられなかったためです。細胞診でがんの可能性が高いと判定しても、実際にはがんではなかったというケースが多発していたのです。
そこで、この「がんに似た細胞」の正体を一つ一つ丁寧に調べ上げ、その特徴や出現パターン、判定方法を体系化する研究が進められました。その結果、がん細胞との鑑別が可能になり、体への負担が少ない細胞診で、子宮体がんの早期発見・早期治療が可能になりました。この日本発の診断システムは国際的にも認められ、ヨーロッパの研究者たちとの共同研究を経て、「横浜システム」という名前で国際報告様式が確立され、世界に広がりつつあります。

命を救う細胞検査士

こうした高度な診断を実現するために不可欠なのが、細胞検査士という専門資格を持ったエキスパートです。細胞検査士は高度な知識と技術が必要で、合格率も約25%と厳しい資格です。さらに近年では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)の適用判断に関わる遺伝子解析の知識までもが求められるようになっています。そのため、大学院などで少人数・実践重視の教育体制が整えられ、細胞の見方や診断の考え方を丁寧に学べる環境づくりが進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 臨床検査学科 教授 則松 良明 先生

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 臨床検査学科 教授 則松 良明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

臨床検査学、形態学、病理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路選択は、将来どんな専門性を身につけたいかまでを考えて行いましょう。その際に、医療の世界で専門性を追求する道を、ぜひ検討してください。医療系は国家資格があるため、就職に強いというメリットがあります。医療の高度化が進む中、細胞検査士などの専門資格や大学院での研究経験の重要性が増しています。大学病院などでは大学院卒の人材が求められ、入職後すぐに国際学会での発表を任されるなど、活躍の場が広がっています。大学院での研究も視野に入れて考えることをお勧めします。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

愛媛県立医療技術大学に関心を持ったあなたは

愛媛県立医療技術大学は、看護学科と臨床検査学科の2学科で構成されています。大学生活を通して、人としての豊かさ、保健医療専門職としての倫理観、専門分野の知識・技術、自ら考え行動する実践力などを培うとともに、卒業後の活動においても、常に将来を見据え社会の変化や保健医療の進歩に的確に対応できる主体性や課題解決能力を身につけて欲しいと考え、カリキュラムを編成しています。
また、看護学科卒業後の進路として助産学専攻科(1年制)を併設するなど、地域の保健医療福祉に貢献できる人材の育成に努めています。