命を守る防災教育の新しいかたち

防災教育の課題
日本では災害への備えが重要視されていますが、学校教育において防災という教科は存在せず、標準とされる教材もありません。そのため、多くの学校ではありきたりの避難訓練を実施するだけで、防災教育を行ったことにされているのが現状です。また、「島があるから、ここには津波は来ない」といった地域の誤った言い伝えが子どもの意識に影響してしまうこともあります。授業で正しい知識を学んでも、数年後には再び誤った考えに戻ってしまうケースも少なくありません。
災害を「自分事化」する
この問題を解決するために、さまざまな取り組みが行われています。その一つが、津波の特徴を観察する水槽を使った実験です。長さ7~8メートルほどの大型水槽に水を満たし、その水が塊となって一気に押し寄せる津波の特徴や、引き波の有無などを、40人学級の子どもたち全員が目で見て体感しながら学べます。大規模災害を「小さく再現する」ことで、抽象的だった自然現象を自分事としてイメージできる点が特徴です。津波の本質を理解して、「島があるから津波は来ない」「引き波が来たら津波がわかる」といった地域の言い伝えが間違いだと気づくようになります。
また、「もし自分がその場にいたらどう行動するか」を具体的に考えられるようにするために、防災をテーマにした創作小説や、寸劇の活用も広がっています。避難訓練も、けが人を想定した介助や、実際の揺れを踏まえた行動の選択など、より現実に近い形へと改善が試みられています。
学校と地域の連携
防災教育の難しさは地域ごとの温度差によっても生じます。過去に大きな災害を経験した地域では取り組みが進む一方、危機感が薄い場所もあります。そのため、学校・消防・気象台などが協力し、教材提供や講師派遣を行う仕組みづくりが進められています。
学校教育を通じて地域全体の意識を変えていくことが防災教育のめざす姿です。地域を問わず、どの学校でも実践できる体制づくりを目標に、取り組みが進められています。
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先生情報 / 大学情報

北海道教育大学 教育学部 教員養成課程(釧路校) 教授 境 智洋 先生
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