植物が秘めた薬のタネを探し出せ! 天然物創薬研究の世界

植物の中に隠された薬のタネ
植物の中には重要な薬の成分を含むものがあります。植物には薬草としてそのままの形で利用されてきたものもありますが、現代では植物に含まれる成分を科学的に分析して、薬になる可能性を秘めた化合物、いわば「薬のタネ」を探す研究が行われています。
タネ探しの第一歩は、対象とする植物選びです。古くから薬として使われてきたものや、まだ誰も調べていないものなど、幅広い植物が候補になります。花や果実の状態によって成分がどのように変化するかも詳しく調べられます。
薬のタネを見つけ、育てる
採取した植物から有機溶媒を使って成分を抽出し、クロマトグラフィーという方法で成分を分離・精製します。その後、特殊な分析機器で化学構造を決定します。ここで、今まで世界のどこでも見つけられていなかった化合物が発見されることも多いです。次に、病原菌やウイルス、人工的に培養したがん細胞などを利用して生体に対してどんな効果があるかを調べます。著しい効果が認められれば新たなタネの誕生です。
このようにして薬のタネを見つけた後は、それを薬として使える形に育て上げるプロセスに進みます。まず、植物から単離されたままの成分は、安定性や毒性などの面で改良が必要になる場合があるため、それを調べて構造を少し変えることで改良する工夫を行います。また、植物からは少量しか得られない成分もあるため、人工的に合成する研究も欠かせません。
薬として花開く日をめざして
最近発見されたタネに、ジンチョウゲ科の植物に含まれる「ダフナン型ジテルペノイド」という天然化合物があります。この化合物は、強い抗HIV活性を有し、新たな抗HIV薬の候補として期待されています。現在は育成段階にあり、その先には、動物実験、臨床試験など多くのプロセスが待っています。タネが薬となるまでには、一人の研究者が生涯で1つの薬を完成させられれば良い方と言われるほど、長い時間がかかるのです。人々の健康を支える日をめざして、息の長い研究が続けられています。
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