「悲しい」は一つじゃない 心理学が解明する感情の複雑さ

「悲しい」は一つじゃない 心理学が解明する感情の複雑さ

悲しみにもタイプがある?

大切な人と別れたとき、目標に届かなかったとき、孤独を感じたときなど、いずれも「悲しい」という言葉で気持ちが表現されます。しかし、そのときの心や身体の状態は同じなのでしょうか。
この疑問を確かめるために、悲しみを原因別にタイプ分けして、反応を測定する心理学実験が行われました。実験では、参加者に刺激を与えて悲しい感情を喚起し、アンケートによる心理反応に加えて、血圧や皮膚電気反応などの生理反応を測定しました。その結果、悲しみのタイプごとに反応が異なることが明らかになりました。例えば、悲しみを感じると皮膚電気反応が上昇する点は共通していましたが、元の状態に戻るまでの時間は、失敗の悲しみは短く、死別の悲しみでは長いという結果が得られたのです。

悲しみが「癒やされる」とは?

悲しみを「癒やす」方法の研究も進められています。一般的には悲しみを弱めることが癒やしだと考えられがちですが、例えば「悲しみの強さは変わらなくても、コントロールしながら日常生活を送れる」状態が「癒やされた」状態とも捉えられます。悲しみのタイプによって、どのような状態を「癒やされた」とみなすのかや、ケアの方法も異なるでしょう。心理学研究を通じた適切な支援方法の開発が期待されます。

悲しみの多面性

悲しみは、避けたい感情と考えられがちですが、前向きな働きも指摘されています。つらい経験を通して他者の痛みに共感できるようになったり、人とのつながりを大切に感じたりするようになることがあるからです。また、卒業式では楽しかった思い出に胸が温かくなる一方で、その時間が終わることへの悲しさも感じられます。このように、複数の感情が混ざり合う「混合感情」という現象も研究対象となっています。
感情を正しく理解することは、自分自身と向き合い、他者を支える力を育てることにつながります。感情は主観的で目に見えず、研究対象として扱うのが困難とされてきました。それでも、心理学において欠かせない要素として研究が進められているのです。

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信州大学 人文学部 人文学科 心理学・社会心理学コース 助教 白井 真理子 先生

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感情心理学、精神生理学

メッセージ

心が強く動かされるような体験をたくさんして、自分の視野を広げてください。世の中はわからないことや、すぐに答えが出ないことばかりです。学問の面白さは、その「わからなさ」を探究していくところにあります。感情心理学は、目に見えないのに、人を動かしてしまう心の不思議を扱う学問です。日常生活と密接に関係しているので、あなたが普段感じる疑問や不思議とも深くつながっています。「これって何だろう?」「面白いな」と感じたその気持ちを大事にしながら、学びを深めていってほしいです。

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