講義No.15672 看護学

患者さんとの対話から始まるストーマケア研究

患者さんとの対話から始まるストーマケア研究

心のケアも看護師の大切な仕事

看護師の仕事は、病気やけがの治療に携わることだけではありません。患者さんとの対話を通して信頼関係を築き、心のつらさや不安に寄り添うことも大切な役割です。患者さんの気持ちに寄り添いたいという思いから始まった看護研究もあります。その一つがストーマケアに関する研究です。ストーマとは、手術で腸や尿管の一部をお腹に出し、新しく作られた排泄口のことで、人工肛門や人工膀胱とも呼ばれます。お腹に専用の袋(装具)を貼って排泄物をためるしくみで、患者さんにとって大きな体の変化です。手術前には「体に器具を埋め込むの?」という誤解や、「今後どうなるのだろう」といった不安を抱く人もいます。

患者さんが本当に困っていることを知る

患者さんの思いに応えるため、実践に基づく研究が進められています。ストーマの手術を受ける患者さんが、どんなことに困っているのか、不安に思っているのかを明らかにすることから始まりました。語りを丁寧に聞く中で、ストーマの管理だけでなく、手術後の生活や病気の再発など、それぞれ異なる悩みがあるとわかりました。そこで手術前に、専門の看護師がストーマについて説明する面談を行うことになりました。この面談で不安がやわらぎ、手術への理解も深まりました。また手術後の生活をイメージしやすくなり、セルフケアの習得が早まり、入院期間の短縮にもつながることが明らかになりました。

退院後も続く継続的な支援

ストーマの手術を受けた患者さんにとって、退院後の生活を支えることも大切です。特に高齢の方は、手先が動かしにくかったり、もの忘れがあったりするため、個々に応じた支援が必要です。また、ちょっとしたことでも相談できる体制づくりも重要です。たとえば、装具から便がもれると、においや皮膚障害の原因になります。これを防ぐには、退院後もストーマ専門外来などで継続的に支援することが欠かせません。こうした取り組みを通じて、「どうしたら患者さんのQOLを高められるか」を考えながら、研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

北里大学 健康科学部 看護学科 教授 松原 康美 先生

北里大学 健康科学部 看護学科 教授 松原 康美 先生

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臨床看護学、がん看護学

メッセージ

私は看護師として患者さんと向き合う中で、「この先どんな道を進んでいきたいのか」と考えてきました。ストーマをもつ患者さんの皮膚トラブルに対して何もできなかった悔しさから、専門的な知識を身につけたいと思うようになり、実践経験を積みながら「患者さんの役に立つ研究がしたい」と考えるようになりました。あなたが看護師になって何をしたいか、まだ決まっていなくても大丈夫です。現場での経験を通して、きっとやりたいことが見つかります。看護師が活躍できる場は、病院の他にも訪問看護や地域、大学など、様々な所にあります。

北里大学に関心を持ったあなたは

北里大学では「なりたい、を超えていく」をコンセプトに、思い描いた将来像をも超えていけるような、社会に出てからも成長し続ける人の育成をめざしています。
また、「生命科学の総合大学」として、データを読み解き、未来の課題を見つける分野(未来工学部)、生命科学の基礎的研究を行う分野(理学部)、 動植物と環境に関する分野(獣医学部、海洋生命科学部)、人間の生命と健康に関する分野(薬学部、医学部、看護学部、医療衛生学部、健康科学部)の4つのフィールドから総合的にアプローチしています。