患者さんとの対話から始まるストーマケア研究

心のケアも看護師の大切な仕事
看護師の仕事は、病気やけがの治療に携わることだけではありません。患者さんとの対話を通して信頼関係を築き、心のつらさや不安に寄り添うことも大切な役割です。患者さんの気持ちに寄り添いたいという思いから始まった看護研究もあります。その一つがストーマケアに関する研究です。ストーマとは、手術で腸や尿管の一部をお腹に出し、新しく作られた排泄口のことで、人工肛門や人工膀胱とも呼ばれます。お腹に専用の袋(装具)を貼って排泄物をためるしくみで、患者さんにとって大きな体の変化です。手術前には「体に器具を埋め込むの?」という誤解や、「今後どうなるのだろう」といった不安を抱く人もいます。
患者さんが本当に困っていることを知る
患者さんの思いに応えるため、実践に基づく研究が進められています。ストーマの手術を受ける患者さんが、どんなことに困っているのか、不安に思っているのかを明らかにすることから始まりました。語りを丁寧に聞く中で、ストーマの管理だけでなく、手術後の生活や病気の再発など、それぞれ異なる悩みがあるとわかりました。そこで手術前に、専門の看護師がストーマについて説明する面談を行うことになりました。この面談で不安がやわらぎ、手術への理解も深まりました。また手術後の生活をイメージしやすくなり、セルフケアの習得が早まり、入院期間の短縮にもつながることが明らかになりました。
退院後も続く継続的な支援
ストーマの手術を受けた患者さんにとって、退院後の生活を支えることも大切です。特に高齢の方は、手先が動かしにくかったり、もの忘れがあったりするため、個々に応じた支援が必要です。また、ちょっとしたことでも相談できる体制づくりも重要です。たとえば、装具から便がもれると、においや皮膚障害の原因になります。これを防ぐには、退院後もストーマ専門外来などで継続的に支援することが欠かせません。こうした取り組みを通じて、「どうしたら患者さんのQOLを高められるか」を考えながら、研究が進められています。
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