温室効果ガス交換量を観測 精密なシミュレーションを可能に

温室効果ガス交換量を観測 精密なシミュレーションを可能に

温室効果ガスの「交換量」

人類が直面している大きな課題の一つが、地球温暖化です。そして、地球温暖化は大気中の二酸化炭素やメタンガスといった温室効果ガスの増加が原因です。
温室効果ガスは人間の活動から排出される量が問題になっていますが、動植物、微生物の生命活動によっても放出や吸収が行われています。例えば植物は、光合成で二酸化炭素を吸収し酸素を放出しますが、呼吸するときはその逆の現象が起きます。今、そうした生態系と大気の間でやり取りされている温室効果ガスの量(交換量)を調べる研究が注目されています。

温室効果ガス交換の自動計測

温室効果ガスの交換量の計測に使われる最新の手法は、「渦相関法」と呼ばれる方法です。森林の一角に観測タワーを建て、二酸化炭素の濃度などを24時間観測します。風速と二酸化炭素濃度の変化から、そのエリア全体の交換量を計算する、気象学に基づいた観測方法です。同時に、日射や気温といった気象データもとり、二酸化炭素の交換量と気象との相互作用も調べることができます。
こうした計測は、世界中の延べ約2,000カ所で行われています。そのデータは公開されており、さまざまな研究に利用されています。

水域ではどうか

地上の生態系と大気との温室効果ガス交換量の計測は、主に森林で行われることが多いのですが、湖など、水域での計測も始まっています。湖底の堆積物から放出されるメタンガスなどの交換量を調べるためです。これにより、気象条件によってメタンガスの放出量がどう変わるかなどがわかってきました。また、水辺に生えるスイレン、ヨシなどの水生植物の状態が、温室効果ガスの交換量にどう影響しているかという研究も行われています。
このように森林以外の場所でも計測を行うことで、生態系の違いによる温室効果ガス交換量の違いやそのメカニズムを解明することにつながります。より精度の高い地球環境のシミュレーションが可能になると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 理学部 理学科 物質循環学コース 准教授 岩田 拓記 先生

信州大学 理学部 理学科 物質循環学コース 准教授 岩田 拓記 先生

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大気水圏科学、物質循環

先生が目指すSDGs

メッセージ

気候が変わってきていることは、あなたもこれまで生きてきた経験からも実感しているでしょう。その原因となっている温室効果ガスは目に見えず、実感がないかもしれませんが、観測の数値を見れば実体があることがよくわかります。観測は自然を相手にするので困難の連続ですが、長い目で見ると、将来の地球環境を守ることに役立てることができ、大きなやりがいを感じています。これからの時代を生きる若いあなたにこそ、こうした分野に興味を持って、研究や活動に取り組んでほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
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