暑さで米が実らなくなる? 温暖化に挑む稲作の研究

暑さで米が実らなくなる? 温暖化に挑む稲作の研究

温暖化による稲作の危機

私たちの食卓に欠かせない米が、温暖化の進行により不作の危機に直面しています。高温によってイネが実らなくなることが分かっています。主に8月の開花時期に気温が35℃を超えると実りが急激に悪化し、40℃ではほとんど実らなくなります。イネは午前10~12時頃に開花するため、現在の日本ではその時間帯に35℃を超える日はさほど多くありませんが、猛暑の増加により限界ラインまで近づいています。稲作はすでにギリギリの状態で成り立っているのです。

高温で実らなくなる原因

高温条件下ではイネの花粉がベタつく現象が観察されます。花粉がべたつくと花粉を包む葯(やく)が開いても花粉がうまくこぼれ落ちず、雌しべの柱頭に届く花粉の量が減って受粉が不安定になるのです。
受粉のしやすさには品種による違いもあります。一つの要因は、葯の割れ方です。葯が大きく割れる品種ほど花粉がこぼれやすく、高温下でも受粉が安定します。また、雄しべと雌しべの柱頭との距離も重要です。イネは主に重力で自家受粉する植物のため、この距離が近いほど、受粉が成立しやすくなります。高温下でも実るかどうかは、こうした形態の違いが大きく関わっています。

温暖化が進む未来のために

今後、気温が1~2℃上昇すれば、開花時刻の気温が35℃を超える状況が当たり前になり、イネが実らない田んぼがさらに増えることが懸念されます。米は世界の半分の人々が食糧として利用する穀物でもあり、その懸念が現実となればインパクトは計り知れません。日本にとっても食料自給を根本から揺るがす大きな問題です。この危機に備えるためには、高温に強いイネ品種の開発が急がれます。効果的な品種改良を進めるには、まず高温で実らなくなる原因を正確に解析する必要があります。原因がわかれば、強い性質を持つ品種を選び出し、その特徴を別の品種へ受け継がせる育種が効率的に行えます。
世界の主食である米を未来にわたって守るために、温暖化に備えたイネの研究は待ったなしの課題になっているのです。

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岐阜大学 応用生物科学部 食農生命科学科 教授 松井 勤 先生

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