住む場所は誰が決める? 災害と暮らしから考える居住環境計画

住む場所は誰が決める? 災害と暮らしから考える居住環境計画

復興計画が投げかけた問い

東日本大震災の後、被害の大きかった沿岸部では大規模な復興計画が進められました。その中で大きな決断となったのが、津波の危険が高い地域から住宅を高台へ移す方針です。沿岸部には工場や商業施設を配置して、人が住む場所と働く場所を分ける計画が立てられました。これにより津波からの安全が高まった一方で、住み慣れた土地を離れることへの戸惑いや、地域とのつながりをどう残すかといった課題も生まれました。復興計画は、単に建物を建て直すことではなく、「人がどう暮らすのか」を考える取り組みでもあります。災害をきっかけに、住まいと土地・環境の関係が改めて問われました。

暮らしを支える「居住環境計画」

こうした復興の経験が示しているのは、「人がどこに住むか」は個人の問題であると同時に、社会全体で考えるテーマだということです。そして、こうした視点から暮らしを考える分野が、建築・都市計画の中にある「居住環境計画」です。人がどこに住み、誰と暮らし、どのように移動して、地域とどう関わっていくのかという積み重ねにより、まちの環境が形づくられ、また逆に、その環境が人の生活のしやすさや安全性に影響を与えます。そのため、計画、政策、制度によって、危険な場所から安全な場所へ住まいを移すように促したり、特定の地域に人が集まりやすくなるよう条件を整えたりするなど、社会全体で人の暮らしを支える取り組みが行われています。

日常の延長としての防災

近年は、気候変動による豪雨や海面上昇、人口減少や高齢化、家族の形の変化など、暮らしを取り巻く条件が大きく変わっています。その中では、地域の空き家問題も大切なテーマです。使われていない住宅を民泊として活用し、普段は地域を元気にして、災害時には避難場所として使うといった災害と日常をひとつながりにした「フェーズフリー」という考え方も登場しています。防災を特別なものにせず、日常の延長として捉えることが、これからの都市や居住環境づくりに求められる大切な視点です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 都市安全研究センター  教授 近藤 民代 先生

神戸大学 都市安全研究センター 教授 近藤 民代 先生

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防災工学、居住環境計画、住宅復興論

メッセージ

旅行に出かけたときは、ぜひ紙の地図を手に取って歩いてみてください。スマートフォンの地図は目的地までの点と点を結ぶだけですが、紙の地図は町全体を一つの「面」として捉えることができます。観光案内所などで手に入る地図には、地域の歴史や見どころがまとめられており、それを眺めながら歩くことで、思いがけない発見や楽しさに出会えるはずです。地域全体を感じ取る視点は、建築や都市を考える上でとても大切な感覚です。日常の中でも、地図を通して周囲を見渡す経験を重ねてみてください。

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