厄介な図形は爆発させよ! 代数幾何学の特異点解消

厄介な「特異点」
xy座標上でx²+y²-1=0を満たす点をつなげると、原点を中心とした半径1の円になります。また、y²=x²+x³を満たす点をつなげると、原点で交差する「α」の文字に似た曲線になります。このように文字を使った多項式で図形を表わし、式を調べることで図形の性質を調べるのが「代数幾何学」です。
代数幾何学では、交点やとがった点(多角形の頂点など)、つまり滑らかでない点を「特異点」と呼び、これをうまく修正して滑らかな図形にする「特異点解消」の方法が研究されています。例えば、円はどこにでも接線が引けますが、交点や頂点には接線が定まらないなど、特異点はさまざまな「厄介な性質」を持っているからです。特異点解消問題は数学の世界では重要な研究対象であるだけでなく、理論物理学やAIの学習理論など他の多くの分野にも関わっています。
特異点を「爆発」させる?
特異点を解消する操作を「爆発(Blow-up)」と呼びます。例えば平面上にある2つの曲線の交点の場合に、次元を1つ上げてそれぞれの曲線を上下に分離し、立体交差のようにすることで特異点を解消する手法です。前出のy²=x²+x³の場合、原点で2本の曲線が交わりますが、爆発させることで2本の直線が離れ、特異点が解消します。
正標数の世界で特異点を攻略する
「標数0」という世界では、すべての次元で特異点解消できることが、フィールズ賞を受賞した数学者・広中平祐氏によって証明されています。「標数0」とは、実数など、どれだけ1を足しても0にならない体系です。一方、「正標数」といって、1をp回足すと0になる数の体系があります(pは素数)。例えば、「5で割った余り」の世界では、1を5回足すと0になります。
現在、正標数についての特異点解消法は3次元までしか見つかっていません。そのため、「これを使えば正標数でも全次元で突破できる!」といった、ゲームの必勝法のような特異点解消を与える手順(アルゴリズム)を見つける研究が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
