キノコから採れる物質を薬に! 天然物合成の手法を探る

薬にもなる天然物
自然界には、生物の体内などで作られる数々の有機化合物があります。これらは天然有機化合物(天然物)と呼ばれています。中には生物の体に影響を与える「活性」を持つ天然物もあり、創薬や化粧品開発などさまざまな分野で役立てられてきました。ただし、人工的に合成する方法がわからなかったり、合成できたとしても手順が多く難易度が高かったりと、実用化に向けて課題が残っている天然物も多いのです。
キノコから鎮痛薬?
例えばマンネンタケというキノコから採れる天然物の中には、タンパク質の一種である「COX-2(コックスツー)」を阻害する働きのあるものがあります。COX-2は炎症や痛みなどを引き起こすため、働きを抑える薬が開発されてきました。マンネンタケから採れる天然物も薬の材料に役立ちそうですが、長い手順を経なければ合成できません。この工程を短縮する方法が、研究で明らかになりました。
より効率的な合成をめざして
特に注目されたのが、複数の反応を1工程で一気に進められる点です。有機化学を用いた天然物の合成では、反応が終了した後に出来上がったものを精製してフラスコから取り出す、といった後処理が必要でした。これをくり返すことで、複雑な天然物の骨格を作り上げていきます。一方新たに発見された方法では、反応が終了した後に処理をしなくても、同じフラスコ内で次の反応を始められます。実験では、フラスコ内の温度を変化させたり、アルカリ性や酸性といったpH値を調整する試薬を入れたりするだけで4つの反応が連続して進み、天然物の骨格が一気に構築されました。このように後処理の時間や工程数を減らせば合成のコストも下がるため、将来的に創薬などにも応用しやすくなります。
ほかにも植物や微生物が天然物を作る過程である「生合成」を参考に、天然物を合成する研究も始まりました。生物は天然物を生み出す際、無駄なく効率的に生合成を行います。そのときの手法を再現できれば、より効率よく天然物を合成できるでしょう。
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