ウミクワガタって? 海の小さな生き物の謎に迫る

ウミクワガタって? 海の小さな生き物の謎に迫る

知られているのはオスばかり

ウミクワガタを知っていますか。数ミリほどのエビやカニの仲間です。成体のオスはクワガタムシのような大きな大顎を備えますが、メスには大顎がなく、幼生の形も成体と大きく異なっています。また、幼生は魚に寄生しますが、寄生後は休息と脱皮のために海底の巣穴などに潜み、成熟後もその中に留まるため、見つかりにくいのです。そのため、形が特徴的なオスはともかく、メスや幼生が報告されている種類が少なく、その生態についても断片的にしか知られていません。

巣穴の中で起きていること

巣穴の中で暮らすウミクワガタの行動は、外から観察できません。そこで、ある種について、巣に見立てた網を水槽内に設置して、外側から観察できる環境を整えたところ、脱皮が近いメスをオスが見つけて抱え込む様子が確認できました。ウミクワガタは、ほかの多くのエビやカニの仲間と同じように、メスの脱皮直後に交尾しますが、脱皮しそうなメスをほかのオスに取られないようにオスがガードするようです。また、メスはオスが近くにいないと脱皮しない傾向があり、交尾の失敗を避けているようでした。こうしてウミクワガタの繁殖行動が少しずつ明らかになってきました。

名前をつけるという研究

種を正しく見分けるということは簡単ではありません。実際、長い間、同じ種類だと考えられてきたものがよく似た別種であることが判明したり、形が大きく異なるために別種とされてきたものが実は同種だったと報告されることは珍しくありません。
どこにどのような生き物がいるのかを丁寧に調べて、新しい種であれば正式に名前を与えて記録していくことは、生物の存在を社会の知識として残すために欠かせません。その記録の積み重ねが、将来海の環境が変わったときに、変化の影響を見極めるための基準になります。今を正確に記録することが、環境を守るための出発点になるのです。

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東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授 田中 克彦 先生

東海大学 海洋学部 海洋生物学科 教授 田中 克彦 先生

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高校生のうちは、たくさん迷ってください。やりたいことが見つからなくても焦る必要はありません。いろいろなものに触れて失敗も重ねながら、熱中できるものを探してください。遠くにある華やかなものだけでなく、ふと目に入った道端の雑草や虫など、普段は気にも留めないものの中に面白い発見が隠れているものです。身の回りのものに目を向けてみると、あなたがまだ気づいていない好奇心が芽生えるかもしれません。小さなことを「なぜだろう」と思える感覚が、どんな学問にも通じる出発点になります。

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