心理学は読心術じゃない 「わからない」から始まる心の探究

カウンセラーは人の心が読める?
心理学を学ぶと「人の心が読めるようになる」と思っている人は多いのではないでしょうか。実際は、カウンセラーでも他人の心は簡単にはわかりません。わからないからこそ、どう感じているのかを一生懸命想像して、相談者(クライエント)自身が発した言葉を繰り返したり、要約したりしながら応答を重ねていきます。そうすることで必然的に相手への理解が深まり、「こういうことですか?」と問いかける言葉がだんだんその人の思いに近いものになっていくのです。これが、「カウンセラーは人の心が読める」と思われがちな理由です。心理学を学んだからといって、読心術のような特殊能力が身につくわけではないのです。
答えはその人の中にある
ただ、相手をわかろうとする姿勢は、カウンセリングにおいて大きな意味を持ちます。クライエントが「自分のことをわかってもらえている」と感じると、カウンセラーとの間に信頼関係が生まれます。すると、より深い対話が可能になり、クライエント自身も自分の内面に目を向けるようになります。
臨床心理学のパーソンセンタード・アプローチという立場では、「なりたい自分は、その人自身が知っている」と考えます。クライエント本人が自分の心を見つめ直すことは、本当に求めていることや「どうなりたいか」に気づき、進むべき方向を見いだす鍵になるのです。カウンセラーは相手を深く理解することで、それを一緒に考えてサポートする存在といえます。
本音がわかると人生が開ける
実際のカウンセリングでは、思いもよらない気づきが得られることもあります。例えば、就職活動で営業職を志し、行き詰まっていた学生が、対話を重ねる中で自分が本当に得意なことに気づき、やりたい職種を見つけて大胆に方向転換したケースがありました。心の奥底をともに探ることで、想像もしなかった本音に出合い、いきいきと変化していく姿が見られます。人のことはわからないからこそ、知ろうとすることで新たな可能性が見えてくるのです。
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龍谷大学 心理学部 心理学科 准教授 青木 剛 先生
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