講義No.16014 音楽

同じテノールでも個性いろいろ 声の細分化が進むオペラの世界

同じテノールでも個性いろいろ 声の細分化が進むオペラの世界

役によって異なる声

オペラでは、同じテノールでも、演じる役によって求められる声の特徴が異なります。例えばモーツァルトの代表作『魔笛』では、主人公のタミーノは若々しく気品のある美しい声で歌う役です。一方で、同じテノールでもモノスタトスという登場人物は、少しクセのある性格を表現するため、コミカルで特徴的な歌い方が求められます。このように、同じ声の種類でも、役によって「どんな声が合うか」は大きく異なります。映画やアニメでも、登場人物によって声優が変わるように、オペラでも声の個性に応じて役が選ばれているのです。

声の分類で適任がわかる

このような多様な配役を可能にするのが、声の細かい分類です。ドイツでは細かく声が分けられています。例えばテノールだけでも5つに分類され、それぞれに適した役回りがあります。『魔笛』のタミーノは、やわらかく美しい表現が求められる「リリック・テノール」、一方でモノスタトスは、コミカルな表現に向いた「ブッフォ・テノール」が選ばれます。このように声を細かく分類することで、その人の声に最も合った役がわかるのです。無理に合わない役を歌うと喉に負担がかかりますが、声に合った役であれば、より自然に歌うことができ、長く声楽を続けることにもつながります。

日本の声楽に必要な視点は

一方、日本ではこうした細かな声の分類はまだ十分に広まっていません。そのため、一人の歌手がさまざまな役を担うことも多く、本来の声の特徴が生かされにくい場合もあります。声の分類が進めば、歌手一人一人の個性に合った役を選びやすくなり、より質の高い舞台づくりにつながります。また、歌手自身にとっても、無理なく長く歌い続けることができるようになります。
声の違いを見極めて、その人に合った役を見つけることは、オペラという総合芸術の完成度を高めるためにも重要です。日本の声楽がさらに発展していくためには、こうした視点を広げていくことが求められています。

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エリザベト音楽大学 音楽学部  講師 升島 唯博 先生

エリザベト音楽大学 音楽学部 講師 升島 唯博 先生

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声楽、音楽学

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メッセージ

歌うことには、好きだから楽しむ喜びと、自分とは違う誰かを表現できる面白さがあります。「どうすれば楽しく歌えるか」と考えることで、自然によい声につながります。頭で考えすぎるより、まずは楽しむことが大切です。声楽は自分の体そのものを使う表現であり、マイクに頼らず声を響かせることで、自分自身をより深く知ることができます。オペラでは別の人物を演じることもでき、普段とは違う体験が広がります。音楽経験の有無にかかわらず、表現する楽しさをぜひ感じてみてください。

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