社会・経済の流れから森と人に関わる「?」を読み解く

社会・経済の流れから森と人に関わる「?」を読み解く

森を維持するカギは、「人の行動・属性」にあり

「森林を維持するには、木を伐らないほうがいい」と考える人は多いでしょう。しかし私たちの生活には家の一部や紙の原料となる木材が必要です。そのため、伐ったら植えるという考え方も大事です。また、木そのものだけではなく、「人がなぜ木を植えるのか」を知ることも重要です。木を植える理由は、人々の暮らし方と深く関わっています。例えば、広い土地を持つ人は「余っている土地に木を植えよう」と考え、出稼ぎで長く家を空ける人は、「戻ってくるまで農地に木を植えておこう」と考える傾向があります。さらに、木材が高く売れるとわかれば、植える面積を広げようとする行動にもつながります。

木が「売れる」からこそ、森は育つ

ただし、木を伐る人と木を植える人がいるだけでは森林の循環は生まれません。植えた木が伐られ、買い取られ、建築材料や製品として使われてはじめて、次にまた植えるという流れが生まれます。もし木材が売れなければ、伐採は進まず、新たに木を植える場所も生まれません。木材をめぐる研究が流通や経済の動きまで視野に入れるのは、木を植える人だけでなく、買う人・使う人も同じように重要だからです。

実は違った森林の「常識」

東南アジアで木材加工に使われる木材の多くは、国有林で伐採されたものであることが一般的でした。しかし、インドネシアで木材加工工場195カ所に電話調査を行った結果、私有林の木材の方が多く加工されていることが明らかになりました。調査を進めると、地域の人々が収入を得るために、ファルカタなどの比較的早く育つ木を私有地に植えて、企業が伐採された木材を買い取るという流れが広がっていることがわかりました。
森林政策を考えるには、国有林だけではなく私有地で育てられる木やその流通にも目を向ける必要があるのです。森林を維持するには、社会の仕組みや経済の動きまで含めて考えることで、はじめて実態に合った政策につながっていきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 農学部 生物環境科学科 森林社会共生学研究室 准教授 岩永 青史 先生

名古屋大学 農学部 生物環境科学科 森林社会共生学研究室 准教授 岩永 青史 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

私は東南アジアに行き、村人の家に住み込んで研究をしてきました。その経験を通して、あなたに伝えたいことが2つあります。1つ目は、自分の言葉で人と関わることを大切にするということです。どれだけデジタルツールが発達しても、自分の言葉で話して初めてわかることはたくさんあります。2つ目は、話をしてくれた人や何かを教えてくれた人に感謝をするということです。話を聞かせてもらうということは相手の貴重な時間を割いてもらっているということです。フィールドワークをしていると、そんな当たり前のことに改めて気が付きます。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。