ボルネオ熱帯雨林の生物多様性と森からの恵み

ボルネオ熱帯雨林の生物多様性と森からの恵み

生命の宝庫・熱帯雨林の不思議な生き物

赤道近くの高温多湿な地域に成立する熱帯雨林は、地球の陸地のわずか約7%に過ぎません。しかし、地球上の生物種の半数以上がこの熱帯雨林に生息し、まさに生命の宝庫といえる場所です。とくに東南アジアの熱帯林には、世界最大の花を咲かせるラフレシアや、昆虫を捕らえて栄養とするウツボカズラのように、ユニークで固有性の高い生き物たちが数多く生息しています。また、同じ種の樹木が不定期に一斉に花を咲かせる「一斉開花現象」など、興味深い自然現象も見られます。熱帯林生態系はその多様性と複雑性のため、まだ十分に解明されておらず、その生物多様性とそれを維持する仕組みを明らかにする研究が行われています。

熱帯林からの恵み

ボルネオ島の先住民であるイバン族の地域には、「プラウ」と呼ばれる共有林があります。地元住民にとってこの森は、水源、食糧、工芸材料など、暮らしに欠かせない多様な生態系サービスの源となる重要な場所です。これまでの研究から、プラウは地域の生物多様性保全にとっても欠かせない場所であることもわかってきました。
実は、日本にいる私たちも熱帯雨林からの製品に囲まれており、たくさんの恩恵を受けています。一方で、熱帯林はいまだに減少しています。これは、商業伐採やアブラヤシ農園の拡大など、国際市場の需要を反映した土地利用の変化が要因です。熱帯雨林の減少により、地域の生物多様性や地域の人々への生態系サービスにも影響があることが懸念されています。

今、私たちにできること

遠く離れた熱帯雨林の問題に、私たちは何ができるのでしょうか。その一つが、個人の消費行動を見直すことです。そして今、世界では「ネイチャーポジティブ」という考え方が広がっています。これは、自然環境の悪化を食い止め、さらに回復させるという国際的な目標です。自然を守るのは、研究者や専門家だけの役割ではありません。ものをつくる人、売る人、買う人——あなたも含めた社会のすべての人が一緒に取り組む必要があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 理学部 生物学科 教授 竹内 やよい 先生

大阪公立大学 理学部 生物学科 教授 竹内 やよい 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生態学、生物学、環境学、社会学

先生が目指すSDGs

メッセージ

熱帯雨林は日本から遠く離れた場所にありますが、実は私たちの生活と深くつながっています。家具や食品、紙など、何気なく使っているものの中にも、熱帯林からやってきた資源がたくさんあります。まずは身近なものを手にとって、どこから来ているのか、その背景にある自然や人々の暮らしに目を向けてみてほしいです。
そして、もし熱帯林や環境問題に少しでも興味をもってくれたなら、ぜひ大阪公立大学で、私たちと一緒に研究をしましょう。自然の不思議を知り、自然と人間とのよりよい関係を考える、そんな学びにきっと出会えます。

先生への質問

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大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。