化学で再現! あの推しの香りやコスメを現実に? 夢を叶える科学力

匂いが心に与える影響
人間は、鼻でとらえた、大気中を漂う物質の化学的な刺激を匂いとして感じ取ります。嗅覚は、感情や体温調節など本能的な機能をつかさどる脳の視床下部にダイレクトにつながっていることがわかっています。視床下部が反応することによって、匂いは人間の心や判断に影響を与えています。
例えば、匂いで食欲が左右されたり、昔の記憶を鮮明に思い出したりします(プルースト効果)。また、人間は自分と免疫系のタイプが異なる異性の匂いに引かれることを示す研究もあります。さらに、日本には悪臭防止法に基づいた「臭気判定士」という国家資格があります。大気中に有害物質がなければいいわけでなく、匂い自体が人間の心身の健康に大きな影響があるのです。
ペットロスを癒やす匂いの再現
匂いの影響力を、心のケアに活用する研究も進んでいます。例えば、亡くなったペットの匂いを再現することで、ペットロスを緩和するのです。ペットの毛や使っていた毛布から「匂い成分」を抽出して特定し、それを人工的に合成する研究が進んでいます。
匂いの不思議なところは、割合の多い成分がその匂いの特徴を決めるわけではないことです。匂いの特徴は、何十から何百種類もの物質が混ざって出来上がります。クロマトグラフィーという、機器を使って匂いを分析する方法で調べると、濃度の高い物質だけでなく、微量な物質が匂いの特徴となることもあります。このような実験では人間の嗅覚も分析機器になるのです。
地域おこしも兼ねた化粧品開発
匂いの研究は、化粧品にも生かされています。例えば酒造メーカーで、酒かすから肌に良い成分や香料となる成分を抽出し、化粧品開発につなげようという動きが進んでいます。酒かすは現在ほとんど廃棄されているので、環境問題の解決や地域おこしにもつながる取り組みです。特に、酵母(米を発酵させてアルコールをつくる菌)によって変わる日本酒のフローラルな香りが、新しい感覚の化粧品の開発につながると期待されています。
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