カオスを測る―「省エネAI」を用いた新たな挑戦

身近に潜むカオス
「カオス」とは、でたらめに見えながらも内部には規則があり、わずかな違いが時間とともに大きな差となって現れる現象のことです。初期値はほぼ同じでも、時間がたつと全く異なる結果になるため、将来の予測が難しくなるのが特徴です。天気の変化や昆虫の個体数の増減、水道の蛇口から落ちる水滴の間隔にもカオスが潜んでいます。こうしたカオスを理解することは、自然や社会の複雑な現象を読み解く鍵になります。
カオスの強弱を測る
カオスには「強さ」があり、その強弱によって活用の方向性が変わります。カオスが強い場合は予測が困難になるため、その性質を生かして乱数の生成や秘匿通信などに応用されます。一方、弱いカオスなら誤差の拡大を抑え込むことができ、より長期間の予測が可能になります。カオスの強度を判定するために、時系列データから確率分布を構築し、時間とともに新たに生み出される情報量(エントロピー)の変化を利用する手法が研究されています。
省エネAIでデータを補う
実際の現象にこの手法を適用するためには大量の時系列データが必要ですが、観測できるデータ数は限られていることが多く、補完用のデータを生成する必要があります。このデータ生成にAIを活用する試みがなされており、中でも注目されているのが、省エネ型のAI「リザバーコンピューティング」です。通常のニューラルネットワークは多層のパラメータを更新していきますが、この手法はシンプルな3層構造で出力層のみを更新することで高速化します。また、従来のAIより消費電力を大幅に削減できるため、カーボンニュートラルへの貢献も期待できます。時系列データの処理に適しており、カオス定量化のための時系列データの生成においては、深層学習に比べて精度が落ちないことが確認されています。機械の故障予測や薬剤の副作用予測など、データが少ない分野での学習用データ生成への応用も期待できるため、カオス理論とAI技術の融合として幅広い活用が見込まれています。
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