細胞の不思議な仕組みを解明 働きを支える膜タンパク質

細胞の不思議な仕組みを解明 働きを支える膜タンパク質

細胞を包む生体膜

私たちの体を作る細胞は、「生体膜」と呼ばれる膜で包まれています。この膜は、内と外を隔てる壁であると同時に、栄養を取り入れたり、不要なものを外に出したりする役割を担っています。その役割を主に可能にしているのが「膜タンパク質」です。膜タンパク質は、細胞内の水の多い環境で作られるタンパク質ですが、最終的には油のような性質を持つ生体膜の中に組み込まれて働きます。油と水は混ざりにくいため、本来であれば膜タンパク質は膜の中に入りにくいはずですが、細胞の中では生体膜に組み込まれ、物質の出入りを調整しています。

分析から見えてきた「糖脂質」の役割

この仕組みを明らかにするため、「膜の中で何が起きているのか」が詳しく調べられてきました。従来、膜タンパク質は、ほかのタンパク質の働きによって生体膜に組み込まれていると考えられていました。しかし、それだけでは説明できない現象が見つかったため、新たな要因として「糖脂質」が注目されました。糖脂質は、油の性質を持つ脂質に糖が結びついた構造をしています。この分子が関わることで、膜の中でタンパク質が適切に配置され、働くための環境が整えられている可能性がわかってきました。糖脂質に着目したことにより、生体膜の仕組みの解明は大きく進みました。

試験管で再現する生命の仕組み

さらに、このような仕組みを試験管の中で再現する研究が行われています。細胞の中で起きている現象を一度分解し、各要素の必要性を一つずつ検証することで、どの要素がどの役割を担っているのかを確かめていく方法です。こうした研究によって、膜タンパク質の働きを詳細に調べることが可能になります。また、現在使われている薬の多くがこの膜タンパク質へ作用するように作られていることから、医薬品の開発や老化の仕組みの解明にもつながることが期待されます。細胞の基本的な仕組みを解き明かし、それを再現することは、生命科学の発展を支える重要な取り組みと言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

岩手大学 農学部 生命科学科 分子生命医科学コース 教授 西山 賢一 先生

岩手大学 農学部 生命科学科 分子生命医科学コース 教授 西山 賢一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

分子生物学、生化学、分子細胞生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校で学ぶ理科は、すでに判明している知識を理解することが中心です。しかし、その先にはまだ解明されていない世界が広がっています。インターネットで簡単に答えが得られる時代だからこそ、「なぜだろう」と疑問を持ち、理由を自分で考え続けることが大切です。研究とは、その問いに向き合い、わかっていないことを一つ一つ明らかにしていく活動です。大学では、そうした問いの答えを自分の力で確かめ、深く探究していくことができる環境が整っています。ぜひ一緒に研究しましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手大学に関心を持ったあなたは

岩手大学は、人文社会科学部、教育学部、理工学部、農学部、獣医学部の5学部からなり、文理バランスの取れた総合大学です。
宮澤賢治も学んだ歴史と伝統、そして市街地ながら緑あふれるキャンパスは利便性も高く、落ち着いた学びの環境を形成しています。
また、全学部がワンキャンパスにあるため他学部の学生との交流も盛んで、学生の研究や就職などにも大きな効果をもたらしています。
大学HPでは、学部紹介やニュース、「岩手大学公式X」等で大学の魅力をお伝えしています。興味を持った方は是非ご覧になってみてください。