微量な天然物を人工合成、パワーアップさせて有効利用

微量な天然物を人工合成、パワーアップさせて有効利用

天然物の人工合成

動植物や微生物が作り出す天然有機化合物(天然物)には、その生物の生存に欠かせないアミノ酸や糖などの一次代謝産物のほか、生存に必須ではないものの重要な機能を持つとされる二次代謝産物があります。二次代謝産物は、薬として利用されるなど、人にとって有用なものが数多くありますが、自然からは微量しか得られません。そこで、有機合成化学を駆使して人工合成する方法を開発し、天然物の機能評価や医薬品などへの利用、さらには天然物を超える機能を持った化合物の合成の研究が進められています。

外来生物を集めて一網打尽に

その一例が、天然物を利用した外来生物対策です。アメリカの五大湖では、ヤツメウナギの仲間のウミヤツメが大西洋から侵入して在来魚の食用イワナなどを食い荒らし、甚大な被害をもたらしています。そこで、ウミヤツメをおびき寄せて、集めたところを効率的に駆除しようと、ウミヤツメのフェロモン様ステロイドが人工的に合成されました。ステロイドの構造のどの部分が誘引活性に重要なのかも明らかになり、天然のステロイドを上回る活性を持った化合物が作れないか、研究が続けられています。
同様に、オーストラリアや石垣島では外来生物のオオヒキガエルが在来種の脅威となっています。このカエルは、出す毒がオタマジャクシを誘引することがわかりました。そこで毒の化合物を合成し、どの部分がオタマジャクシを誘引するのか、同定が進められています。

毒から薬ができる?

フグ毒のテトロドトキシンは、細胞膜にあるナトリウムイオンチャネルに結合して神経伝達を遮断する神経毒です。薬の中には同じようにナトリウムイオンチャネルを遮断する働きのものがあります。テトロドトキシンとよく似た構造を持つ海綿の毒の類似化合物を合成したところ、ナトリウムイオンチャネルを阻害する高い活性が得られました。この類似化合物は鎮痛剤や抗がん剤、アルツハイマー病の治療薬などに応用できる可能性が考えられており、実用化が期待されます。

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先生情報 / 大学情報

岩手大学 理工学部 理工学科 化学コース 教授 中崎 敦夫 先生

岩手大学 理工学部 理工学科 化学コース 教授 中崎 敦夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

有機合成化学、天然物化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

博士課程で天然物合成に使う反応開発をしていた時、全く予想外の反応を発見し、それが面白くて当初とは違ったテーマで論文を書き上げました。その後も合成した化合物の生物活性は、予想をはるかに超えるものでした。研究にはこのような偶然の発見、いわゆる「セレンディピティ」がたくさん落ちています。特に天然物合成は複雑であるがゆえに結果を予測することが難しく、予想外の反応に出会える可能性が高いように思います。こうした意外性に面白さを感じるなら、天然物合成はおすすめの学問分野です。

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