言語は人間の世界観を映し出す

「違う」の「ちがい」
日本語と英語は、それぞれの語順に従って単語を並べていけば、完全に入れ替えられると認識しているかもしれませんが、実際にはわずかなズレがあります。例えば英語の「different」を日本語にするとき、一般的には「違う」と書きます。「ほかと同じではない」という場合は正しいのですが、「その解答は違う」の場合は、「different」より「wrong」が適しています。また、「猫を見た」という日本語を英語にするとき、「a cat」なのか「cats」なのか、日本語にはない「数」を、明確に表現しなければなりません。
話者の世界が表れる
世界にたくさん存在するこうした言語の違いを一つ一つ検証していくと、言語の特性だけでなく、その言語を使う人が「世界をどう切り取っているか」によって違いが生じていることがわかってきます。例えば、「違う」という単語に関して、日本語(話者)は「ほかと同じではない」と「正しくない」を同じ言葉の枠でとらえているのに対して、英語(話者)は切り分けていることがわかります。「猫を見た」の例からは、日本語では数にこだわらなくても話せるのに対して、英語では数に焦点を当てないと状況を言語化できないという傾向が見えてきます。
言葉から人間を知る
同じ言語でも言葉のわずかな違いで表現する世界がまるで異なることがあります。例えば「カレーが良い」と「カレーで良い」はほぼ同じ文ですが、前者はポジティブな印象を、後者はやや妥協した印象を与えます。「が」と「で」のわずかな違いに、話者の考え方や心持ちが思わず表れるのです。
このように、普段はあまり意識されないことかもしれませんが、言葉とは意味を表すだけのものではありません。そこには話者の解釈など、無意識の世界の見え方が詰まっています。表現を一つずつ掘り下げ、「人は状況をどうとらえ、言葉にしているのか」を考えることは、言葉を通じて「人間を知る」という大きな研究テーマへと広がっていくのです。
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