声が大きくなる環境は感染リスクが高い? 環境デザインを考える

周囲の音で変わる声の大きさ
にぎやかな場所ではつい声が大きくなってしまう、そんな経験はありませんか。人が周囲の音に合わせて無意識に声の大きさを調整する現象を、「ロンバード効果」といいます。実はこの何気ない行動は、感染症とも関係しています。声が大きくなるほど、口から放出される飛沫(ひまつ)の量が増えるためです。つまり、周囲が騒がしい環境ほど、知らないうちに感染リスクが高まっている可能性があります。この関係性に注目すると、周囲の音を手がかりに感染リスクを予測できるのではないか、という発想が生まれます。
環境音と飛沫の関係性を分析
飛沫からの感染リスクの研究では、「どれくらい飛沫を吸い込むと危険か」「空気中でどのように広がるか」といった調査はこれまで行われてきました。一方で、「どれくらい飛沫が発生するのか」という点は、まだ十分に解明されていません。そこで、発話による飛沫の発生に注目した研究が進められています。
まず、実際に人が話しているときの声の大きさと飛沫の量を実験で測定し、関連性を分析します。そこに周囲の音の大きさと発話音量の関係を組み合わせることで、環境音から飛沫の発生量を予測するモデルをつくることができます。音という身近な情報から感染リスクを推定できれば、感染症の予防に大きく役立つと考えられています。
人と環境の関係を読み解く
こうした研究は、建築環境工学という分野が基盤になります。この分野では、音や光、温熱、空気といった環境が人にどのような影響を与えるのか、さらに人の行動が環境にどう作用するのかという関係性を解き明かします。例えば、鉄道駅の案内放送を聞き取りやすくする音響設計や、色覚多様性に配慮した路線図のデザインなども、この分野の研究の一つです。
人が安心して過ごせる環境をつくるためには、人がその環境でどう感じ、どう行動するかを理解することが欠かせません。建築環境工学は、私たちの生活に密接に関わる重要な研究領域なのです。
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先生情報 / 大学情報

日本大学 工学部 建築学科 社会音響学研究室 准教授 辻村 壮平 先生
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