極悪だけどユニーク! カニの体を乗っ取るフクロムシの生態

極悪だけどユニーク! カニの体を乗っ取るフクロムシの生態

エイリアンのような寄生虫

SF映画で、異星人が人間の体を乗っ取ってしまうストーリーがよくあります。まさにそんな生態の寄生虫が甲殻類のフクロムシです。フクロムシのメスは、幼生のときに体に注射針のようなものを作って、カニやザリガニなど同じ甲殻類の体内に入り込み、木の根っこのような姿になってカニの栄養分を吸い取ります。そして、栄養を蓄えたら袋状の卵巣を作り、宿主に卵を産ませず、自分の卵だけを産ませるのです。オスのフクロムシはプランクトンのような小さい姿で、メスの卵巣に誘引されて入り込み、授精をします。

宿主のオスをメスの体に

では、オスのカニにフクロムシが寄生したらどうなるでしょうか。調査により、オスのカニがメスのような体に「疑似メス化」させられることが明らかになりました。カニは体が大きく成長する度に脱皮を繰り返しますが、フクロムシはその脱皮の機会を利用して、フンドシと呼ばれる腹部を広くしたり、ハサミを小さくしたりして、オスのカニをメスのカニの特徴を持った体に作り変えるのです。つまりフクロムシは、カニのメスとオスの両方を自分の卵を産むようにコントロールしていると考えられます。

メス化を促す成分がある?

そこで仮説として考えられるのが、オスのカニを「メス化させる」あるいは「オス化を抑制する」神経伝達物質をフクロムシが分泌しているのではないか、ということです。もしその成分が突き止められたら、水産物の養殖に利用して、商品価値の高いメスだけを養殖することが可能になります。例えば、エビフライで食べるクルマエビやバナメイエビは、メスの方が成長が早いので、メスだけ育てれば養殖の効率性が高まるでしょう。
いずれにせよカニなどの甲殻類は、フクロムシによって自分たちの卵が産めずに数を減らすなど、生態系が乱されている可能性があります。海の生物の多様性や生態系を考えるときに、寄生虫の存在は無視できないものになっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 水圏統合プログラム 准教授 豊田 賢治 先生

広島大学 生物生産学部 水圏統合プログラム 准教授 豊田 賢治 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のうちに「自分はこれを研究したい」という目標が決まっている人は素晴らしいです。しかし、高校生で出会う情報は身近な人から得たものが多く、まだまだ限定的です。大学に入ると、いろいろな分野の話をたくさん聞けるので、急にほかの分野が面白くなることがあります。研究では英語で論文を書きますし、証明には数学が必要です。だから学ぶものに対してアレルギーを持たずに、自分の可能性をなるべく狭めないようにしてほしいです。興味がないからといって勉強しないのはもったいないです。

広島大学に関心を持ったあなたは

広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。