家畜にも人間の体にも侵入 寄生虫界のエース「かんてつ」とは

肝臓を食べながら進む
寄生虫は宿主に寄生して害を及ぼす生物です。その中でも吸虫に分類される「肝蛭(かんてつ)」は、一般的な吸虫よりも大きく、大きなもので7~8センチにもなり、世界に広く分布する寄生虫界ではエース級の存在です。
肝蛭は動物だけでなく人間にも寄生する「人獣共通感染性の寄生虫」です。幼虫が中間宿主の巻貝と植物を経て人に感染します。経口で体内に入りこんだ幼虫は、消化管の中で目を覚ますと、十二指腸を突き破って腹の中を進んでいきます。肝臓を探し当てると、肝臓を食べながら内部へ進み、最終的には胆管に到達し、成虫へと成長します。人間の場合は適切な治療を受ければ死に至るケースは少ないですが、動物、特に羊や牛は深刻な被害を受けます。
未解明の成長メカニズム
肝蛭の幼虫が肝臓を食べながら体内を移動する段階が最も宿主に有害なため、幼虫をいかに薬でたたくかが鍵です。また寄生虫治療において深刻なのが薬剤耐性で、肝蛭の場合は特効薬に耐性を持つ個体が世界中で確認されており、それに代わる新しい薬やワクチンの開発が急務となっていますが、それを実現するための実験ツールがありません。
そんな中で近年、肝蛭の試験管内培養が成功しました。これにより、肝蛭の成長メカニズムや、どのように成虫に成熟していくのかというプロセスを解明する手がかりが得られます。このように、試験管内で幼虫の成長を観察・制御できるようになれば、幼虫に効く新たな薬やワクチン開発に役立つことは間違いありません。
研究は獣医学領域へ
公衆衛生の発達により、国内では人間への寄生虫感染は減っています。そのため、日本の医学領域では寄生虫学分野の研究者が減少しました。しかし家畜への感染が世界的に拡大すれば、膨大な経済被害を生み、食料問題にも結びつきます。これまでの知見を引き継いで、これからは獣医学領域が寄生虫学研究を担っていくことになるのかもしれません。
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