子どもにとってあのときの自分は 保育者が育つ「省察」

子どもをどう理解すればいい?
「大人は子どもをどのように理解していけばいいのか?」という、子どもに対する理解の仕方について、保育の現場は常に試行錯誤しています。そこで大切になってくるのが保育の「省察(せいさつ)」です。省察とは、自分の行動や考え、経験したことを客観的に振り返り、その意味を問い、分析を行うことです。
時間の経過とともに変わる視点
保育者の省察についての聴き取り調査では、1回の振り返りだけではなく、時間経過とともに考えがどう変化していくかも記録します。例えば「AちゃんがBちゃんをたたいた」という場面を思い出すと、当日はその場面で保育者が見ていたことだけが語られます。「Aちゃんが怒った顔でBちゃんをたたいた」という語りです。
それが翌日、1週間後と時間がたつにつれ、まるで撮影しているカメラが後ろに引いていくように視界が広がって、「保育者自身の姿」までが語られるようになります。自分が「またこの子は乱暴するのではないか」と予想し、険しい表情でAちゃんを見ていたことで、Aちゃんの心が緊張し、Bちゃんと穏やかにかかわる余裕を失わせていたかもしれない。あの場面は単にAちゃんがBちゃんをたたいた場面ではなく、私が与えたイラ立ちをAちゃんが表出した場面だったかもしれないと気づきます。自分もまた子どもにとっての「環境」の一部だったことに気づけると、単に「Aが悪い」「Bは悪くない」という、裁判官のような保育ができなくなります。
環境を「再構築」する
保育者の省察が積み重なると、何気なく見過ごされてしまいがちな子どもの行為の一つ一つに「あれはなぜだったのか?」など、保育者の問いが立つようにもなります。保育は小さな(園)生活行為で成り立っていますから、小さなことに気づいて問うアンテナがないと、子どもの心の動きをとらえることはできません。子どもの心の動きをとらえられると、その心に添って一歩先を見据えた環境をつくり出せます。
省察は子ども理解を深め、子ども理解を基に環境が構成されるのです。
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