講義No.16265 看護学

認知症の人はゆっくり寝るのが難しい? 睡眠を「見える化」

認知症の人はゆっくり寝るのが難しい? 睡眠を「見える化」

睡眠障害は本人も介護者も苦痛を抱える

認知症の人の自宅での生活を継続する上で、大事になるのが睡眠の問題です。夜眠れずに昼間に眠ってしまうと、日中の活動量が減り、デイサービスなどの利用が難しくなることがあります。その結果、余計に夜眠れなくなる、といった悪循環に陥ってしまうのです。加えて、認知症の本人が眠れず、夜中に何度も起き上がると、家族介護者も目が覚め、転倒などの恐れがあると気が抜けません。排せつ介助が必要な場合は、その都度起きて、ゆっくり眠れない日々が続きます。その結果、本人も介護する家族も心身ともに疲弊し、やがて自宅での介護が限界を迎える要因となります。

自宅での睡眠の状態を調査

認知症の人の多くが夜眠れていない実態や、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、原因疾患によって睡眠の乱れ方に違いがあることは、近年の研究で明らかになっています。
こうした自宅での睡眠状況を調べるため、ベッドや布団の下に敷くだけで睡眠・覚醒の状態を記録できる「非装着型アクチグラフ」を使って測定したところ、認知症の人は夜間の覚醒や離床(布団から離れる)回数が非常に多いことが見えてきました。また、本人への聞き取りで「よく眠れている」と回答した場合でも、睡眠測定結果では、睡眠が頻回に分断されているケースがあることも判明しました。
その一方で、高齢者では本人が「よく眠れている」と感じていることは、幸福感と関係していることも示唆されています。

一人一人に合わせた対策が必要

睡眠にはさまざまな要素が絡み合うため、解決法を一律に示すことは困難です。基本は、身体症状、活動量、食事、環境調整(光や温度など)、精神面のケアなどの非薬物的療法と薬物療法を、その人の状況に合わせて行います。生活リズムを整えて、食事の時間にしっかり起きていられるようになるだけで、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクを減らすことができます。小さな成果を積み重ねて、本人のウェルビーイングと介護者の負担軽減につなげる研究が続けられています。

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大阪医科薬科大学 看護学部 看護学科 教授 樋上 容子 先生

大阪医科薬科大学 看護学部 看護学科 教授 樋上 容子 先生

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老年看護学

メッセージ

高校生の間は、高齢者と関わる機会は少ないかもしれません。しかし、老いは誰にでも必ず訪れます。ぜひ周りにいる高齢者に興味を持ち、一人一人のライフストーリーに耳を傾けてみてください。同じ物語は2つとなく、長く培ってきた経験や習慣がその人自身を形づくっています。そうした人間の奥深さに触れることができるのが、老年看護学の醍醐味(だいごみ)です。高齢者のそれぞれの人生や価値観を理解しながら、これからの超高齢社会の在り方を一緒に考え、築いていってくれることを願っています。

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