がん細胞を狙い撃ち! 無害な物質コンビが放つ強力エネルギー

物理、化学、生物の知識が合体
「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」という新しいがん治療を知っていますか? ホウ素と中性子という2つの物質を組み合わせ、がん細胞だけを狙い撃ちで破壊する治療法です。
BNCTを理解するには、核反応という物理の知識、ホウ素や同位体といった化学の知識、細胞やDNAという生物の知識が必要です。つまり、3つの理系科目の知識が相互に関係しているのです。受験勉強で覚えた周期表や必須アミノ酸といった知識が医療の現場で実際に使われています。バラバラに見える科目の学びが、患者の命を救う技術の土台になっているのです。
出会った瞬間だけエネルギー
BNCTでは、まずホウ素という元素の一種である「ホウ素10」をがん細胞に取り込ませます。そして外から中性子を当てると、ホウ素10は不安定な状態になり、ヘリウムとリチウムという2つの粒に瞬時に分裂します。この時に放出されるエネルギーが、ちょうど細胞1個分の距離だけ届くのです。
実は、中性子だけが体を通り抜けてもダメージはほとんどなく、ホウ素も体内にあるだけでは無害で、やがて排出されます。それぞれは無害なのに、出会った瞬間だけ細胞内に強力なエネルギーが生まれます。こうしてがん細胞だけを正確に狙い撃ちするのです。
薬を脳に届ける新治療法
がん治療では、薬を病巣まで届けることが課題です。特に脳には「血液脳関門」という関所のような仕組みがあり、限られた物質以外は脳の中に入れないように守っています。この防御システムによって、脳腫瘍の治療で有効とされる薬の多くは脳まで届かないという問題があるのです。
そこで研究されているのが、カテーテルを脳に直接挿入し、薬をゆっくりと注入する「CED法」です。BNCTとCED法を組み合わせることで、これまで届けられなかった薬が脳腫瘍まで届く可能性が広がります。治療法を磨くだけでなく、薬の運び方も工夫することで新たな突破口を生み出そうとしているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
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先生情報 / 大学情報

大阪医科薬科大学 医学部 医学科 脳神経外科学教室 准教授 川端 信司 先生
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脳神経外科学、放射線科学、腫瘍生物学先生が目指すSDGs
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