「普通」ってなんだろう? 問いを通じて生きる力を取り戻す

心の健康を支える精神看護の役割
精神看護学は、小児から老年まであらゆる年齢層を対象とし、精神科疾患のある人の治療ケアや、妊産婦や体に病気のある人の心の看護を中心に、予防を含めた幅広い分野にまたがる学問分野です。精神の健康は「スペクトラム」と呼ばれる連続した幅広い状態なため、正常と異常の境界が明確でないという特徴があります。本人や周囲が「これでよいのだ」と思える状態が「健康」なので、その人の体験的なものを扱うのが精神看護学だといえます。
「自分」の生きる力を取り戻す
現代社会では、うつ病などの気分障害で長期休職する人が増えており、その回復支援が重要な課題となっています。従来の医療では「病気を治して職場に戻す」ことが目標でしたが、精神看護では「リカバリー」という考え方を重視しています。これは、病気になる前の自分に戻ろうとするのではなく、病気を体験した「自分」として生きる力を取り戻すことを意味します。薬だけでは実現できないことであり、人との関わりを通してリカバリーを支援するのが精神看護の役割です。
「普通」が示すリカバリーへの道筋
うつ病による長期休職者の職場復帰体験を調査した研究で、ある発見がありました。グラウンデッドセオリーアプローチという質的研究手法を用いて休職体験者の発話を分析したところ、最も多く口にする言葉の一つに「普通」、がありました。この発見に着目して分析を進めた結果、「普通」を取り戻そうと努力する中で、自分の認知の柔軟性を高め、病気の経験を自己の一部として統合していくプロセスが重要であることがわかりました。
職場復帰プロセスを支援するために、薬物療法と心理社会的ケアを組み合わせた包括的な支援モデルの構築が進められています。ヨーロッパで普及している当事者参加型(PPI: Patient and Public Involvement)のアプローチを取り入れて、看護師を含む多職種が連携し、一人一人のリカバリープロセスに寄り添う支援が模索されています。
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