光の補正技術で、生きた脳細胞を視覚化する!

「光散乱」を克服する
光が大気中を通るとき、漂う粒子にぶつかって散らばったりゆがんだりする「光散乱」が起きます。散乱を起こすものを「散乱媒質」といい、天体観測では、散乱媒質を通過した光のゆがみを補正するために光の「波面」の形を変える「波面整形」という技術があります。波面とは、電磁波である光の波の高さが同じ点、例えば波の山の頂点同士をつないだ面のことです。現在、波面整形のうち、特に「コンプレックス波面整形」という技術を使い、生きたマウスの脳細胞を画像として視覚化する「イメージング」というゴールに向けて、研究が進んでいます。
波面整形で鮮明な画像に
生体組織も散乱媒質なので、光散乱を克服する技術として、蛍光粒子や超音波を手がかりにする方法が開発されています。例えば、生体内に蛍光粒子を入れて、生体内で散乱したレーザー光の一部がその蛍光粒子に当たると蛍光の強さが最大化する(光のスポットができる)ように、波面整形する方法です。スポットを線状に動かすことでスキャンし、鮮明なイメージングを行います。
また、散乱を利用した技術が「散乱レンズ」です。ナノサイズの柱(ナノポスト)が並んだ「メタサーフェス」と呼ばれる薄い膜で、緻密に設計された人工の散乱媒質です。この膜を通った光がどのように散乱するかは予測できるため、見たい場所に光が集まるように波面整形することができます。この方法だと、従来の対物レンズよりも広い視野で、かつ、鮮明な画像を得ることができます。
高速更新するデバイスを開発
生体の脳内は、血流や心拍の影響で常に動いています。散乱媒質の状態も時々刻々と変わるため、散乱の計測と波面整形を高速で繰り返す必要があります。そのためのデバイスの開発が進んでおり、10MHz(1秒間に1千万回)で波面整形の更新を行う技術が開発されました。こうした研究により、「生きたマウスの脳細胞を見る」というゴールに近づきつつあります。
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