超省電力な未来をつくる 電子のスピンと熱エネルギーの研究

電力問題を解消する「スピントロニクス」
生成AIの活用や、パソコンやスマホの普及、企業のDX推進により、膨大な電力消費が課題となっています。解決策として期待されるのが、物質内にある電子の「スピン(磁石の性質)」の特性を活用する、スピントロニクスという技術です。
近年のナノテクノロジーの発展により、スピンに関するナノスケールの現象が制御できるようになりました。スピントロニクスによる、超省電力化や高性能な次世代デバイスの開発が活発になっています。
電荷なしで情報を伝える
すべての物質は原子から成り、原子中には素粒子である電子が存在します。電子は、電荷(電気)と熱エネルギーに加えて、スピンを運びます。電荷の流れを電流と呼ぶのに対し、磁気の流れはスピンによって運ばれ、これをスピン流と呼びます。
電流は、電荷が移動するため抵抗や熱が発生しますが、スピン流は電荷を伴わずに情報やエネルギーだけを伝えられます。これを応用すると、データ保存に必要とされる待機電力や、熱によるエネルギー損失を大幅に削減でき、またデータの書き込みや読み出しが高速でできることになります。スピン流の活用で、従来よりも超省電力で高性能なデバイスが可能となるのです。その力をより効果的に発揮させる素材開発も行われています。
電気と熱の変換でスマホにも革命?
また、電気と熱は相互に変換できます。例えばヒーターは、電流の抵抗によって熱を発生させる仕組みです。逆に、熱から電気を発生させることもできます。この性質を最大限に引き出す素材が開発されれば、スマホやウェアラブルデバイスなどを手にしたとき、体温と外気温とのわずかな温度差で発生する電気によっても動作が可能になるかもしれません。
これらは、現在も活発に研究が進められている分野です。スピン流や熱エネルギーといった電子に関わる現象を解明し、効果的に活用できる素材や技術が開発されれば、世界中で起きている電力問題を解消でき、地球を守ることにつながります。
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山口大学 工学部 創成工学科(電気電子系) 准教授 家永 紘一郎 先生
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