「人の移動」がもたらす社会的影響を考える 新しい視点の観光論

「人の移動」がもたらす社会的影響を考える 新しい視点の観光論

観光も季節バイトも「移動」

何か楽しいものを見に出かけて帰ってくることを観光と言いますが、より広い意味でとらえると、観光は「移動現象」です。
移動は、社会にさまざまな形で影響します。例えば、観光客が観光地に集中するオーバーツーリズムは、経済的利益をもたらすこともありますが、受け入れ地域での迷惑行為や文化の変容といった問題も生じます。近年、移動と暮らしに関連して注目を集めているのが、農業や漁業に一定期間従事して各地を旅する季節バイトです。愛媛県のみかん産地では、1カ月半で大量のみかんを収穫するため、地域がアルバイトの受け入れを積極的に行っています。宿の手配や給与などは農家が負担するので、受け入れは簡単ではありません。一方、交流という点では、アルバイトと住民が、限られた期間だからこそ濃密な時間を過ごすことができ、特に毎年訪れるアルバイターとは家族に近い絆ができます。

移動が生み出すライフスタイル

移動がもたらすものの一つに、「一期一会」の出会いがあります。一時的に人々が結びつき、ほどけていくというつながりの形は、移動が生み出す文化と言えるほど特徴的なものです。移動のしやすい社会になった今、一つの地域に住み、同じ会社で生涯働くのではなく、移動しながら労働や余暇を楽しみ、さまざまなつながりに参加し、いろいろな地域を旅して生きるという新しいライフスタイルが出てきています。これは若者だけでなく、リタイアした高齢者にも増えています。

移動から問う「モビリティーズ・スタディーズ」

昔から「出稼ぎ」や「季節労働」のような形で、ある時期に居住地とは異なる場所へ移動し、働く人たちは一定数いました。移動の影響力が拡大する今、こうした生活の楽しさや難しさを知ることから現代社会を考えることもできます。
欧米を中心に始まった、移動に注目して社会を読み解く学問を「モビリティーズ・スタディーズ」と言います。移動がもつ可能性と課題を分析すれば、私たちの暮らしや観光のあり方に新たな道筋を提案できるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山大学 観光学部  講師 鍋倉 咲希 先生

和歌山大学 観光学部 講師 鍋倉 咲希 先生

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モビリティーズ・スタディーズ

メッセージ

観光によって人が集まると、地域経済が潤い、コミュニティが活性化すると思うでしょうか。しかし、観光という現象はそれほど単純ではありません。観光客の過度な流入や観光イメージの形成によって、地域の人たちが苦しむケースもあります。観光化で生活が変えられてしまうこともあるのです。観光にも、問題と可能性の両方があります。一見すると、「良い」ことばかりに見えるものを、本当にそうなのか疑ってみて、そこから自分なりに考えを広げましょう。多面的な視点を持てるようになれば、観光が一段と興味深く、面白くなるはずです。

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和歌山大学は未来を託そうとする若者、保護者のみなさんの願いを受けとめ、若者とともに希望ある未来を創り出したいと決意しています。
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