見えない疲労骨折を防げ 科学データで寄り添うスポーツ医学

エビデンスに基づいたサポート
スポーツ医学とは、医学的知見に基づいてスポーツを科学的に捉える学問です。トップアスリートのパフォーマンス向上、高齢者の健康支援、けがの診断・治療・予防の3つが大きな柱となっています。スポーツのトレーニング現場では、今なお指導者の経験則に頼る風潮が根強く残っています。そうした経験則だけに依存するのではなく、医学的なエビデンスに基づき、正しいアプローチでアスリートに寄り添い、サポートしていくことは、スポーツ医学が果たしている重要な役割です。
疲労骨折の進行は気づきにくい
私たちの骨は、古くなった骨を壊す「骨吸収」と、新しく作り直す「骨形成」を繰り返すことで、日々新陳代謝を行っています。通常の骨折が一回の大きな外力で起きるのに対し、疲労骨折は、小さな外力が繰り返し加わった結果、骨に微細な損傷が蓄積することで発生します。厄介なのは、骨自体には痛覚がない点です。そのため、本人が気づかないうちに病状が進行し、深刻化して初めて発覚するケースが少なくありません。一度疲労骨折を発症すると、2〜3カ月の戦線離脱を余儀なくされ、重症化すれば手術が必要になる場合もあります。こうした事態を防ぐため、スポーツ医学では疲労骨折の予防研究が進められています。
採血ではなく採尿で
疲労骨折の調査は、骨が壊される速度を評価する指標の「骨吸収マーカー」が用いられます。従来の調査ではアスリートの血液が使われてきましたが、体に針を刺す採血を嫌がる選手も多く、体や精神への負担がネックとなっていました。それに対し、自然に排出される尿を用いた調査は、選手への負担を軽減できるというメリットがあります。さまざまな選手の尿を採取して分析した研究では、疲労骨折を起こすと、尿中の骨吸収マーカーであるNTXの数値が上昇することが明らかになりました。目に見えない疲労骨折の進行を尿中のNTXによって可視化できるようになったことは、予防に向けた第一歩と言えます。
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