特定の気体だけ通すポリマー膜 地球温暖化の救世主にも?

特定の気体だけ通すポリマー膜 地球温暖化の救世主にも?

実は隙間がある食品ラップ

食品ラップやビニール袋は、水分やにおいを通さないためのものですが、実は、微細な隙間が開いていて、少しずつ、気体の分子が通り抜けています。日常で使うこうしたフィルムは、ポリエチレンやポリ塩化ビニリデンといった高分子(ポリマー)で作られており、種類によって隙間の大きさや形が異なります。
この性質を利用して、特定の種類の気体だけが通り抜けられるような隙間を持つポリマーで気体分離膜を合成する研究が行われています。

酸素だけを透過させる膜を開発

気体を分離する目的で合成されたポリマーの膜は、食品ラップの1000倍もの気体を通し、日本では世界最高の速度で気体を通すことができる膜が開発されています。例としては、酸素を優先的に通す高分子膜があります。空気中の窒素が約80%、酸素が約20%という通常の状態から、酸素を優先的に通過させることで、酸素が約30~40%の高濃度の空気を作り出すことができます。この膜は、酸素カプセルや、製鉄所で炉の温度を高めるための燃焼用ガスの生成に利用されています。

二酸化炭素の分離で環境に貢献

特定の気体だけを通せる秘密の一つは、「共重合」です。通常、プラスチックはポリマーと呼ばれ、モノマーと呼ばれる1種類の分子が鎖状につながった構造(重合)をしています。2種類のモノマーを交互につなげる共重合では、分子の形の違いから鎖に凸凹が生まれ、形がかみ合わない部分に隙間が生まれます。モノマーの形を設計し、通過させたい気体分子だけを通過させる大きさの隙間を作ります。
もう一つの秘密は「官能基」です。分子の一部に、特定の機能を持った原子の集まりをくっつけます。例えばアミノ基という官能基は、二酸化炭素を引き付ける作用があり、膜の隙間に二酸化炭素を呼び込む働きをします。地球温暖化防止のため、二酸化炭素を分離する膜は産業界からも需要が高く、企業と大学との共同研究も進んでいます。

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福井大学 工学部 物質・生命化学科 教授 阪口 壽一 先生

福井大学 工学部 物質・生命化学科 教授 阪口 壽一 先生

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メッセージ

好奇心や「なぜ?」と考える習慣を持ってください。そして、「なぜ?」で終わらず、自分で調べてみましょう。疑問を調べ、どうしたら解決するかを考え、試してみることが大切です。そうした姿勢は、大学、特に理系の学部での勉強や研究活動に役立ちます。うまくいかないことがほとんどで、やる気をなくすこともありますが、「この方法ではうまくいかないとわかった」という事実を成功ととらえて、挑戦し続ける姿勢が大切です。研究だけでなく、人生にもこうしたポジティブな気持ちで向き合ってください。

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福井大学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。実就職率は複数学部を有する国立大学の中で、18年連続ナンバー1の実績を誇ります。(2008-2025年度)