講義No.16425 薬学

がん細胞の特性を逆手に 副作用を抑える薬のデリバリー術

 がん細胞の特性を逆手に 副作用を抑える薬のデリバリー術

薬の副作用はなぜ起きる?

風邪薬を飲んだとき、眠くなった経験はありませんか? それは副作用と呼ばれるもので、薬の成分が効かせたい場所だけでなく、全身に広がってしまい、意図しない場所にも作用することで起こります。抗がん剤など強い薬になると、副作用もさらに強烈です。がん細胞を攻撃するほどの力が薬にあるため、健康な細胞にも大きなダメージを与えてしまいます。場合によっては、薬の投与をやめなければならないケースが出るほど、副作用は重大な問題なのです。

あえて「余計な部分」を付ける

副作用を減らすため、薬を必要な場所にだけ届ける仕組みとして「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」が研究されています。例えば、一部のがん細胞にはグルタチオンという物質が大量に存在します。グルタチオンはもともと体を守るための物質ですが、増えすぎることで、抗がん剤の効き目を弱める方向に働いてしまいます。
DDSではこの特性を逆手に取り、薬にあえて「余計な部分」をくっつけて投与します。投与時に薬はまだ眠っている状態で、体に害を与えません。がん細胞の中に入り、グルタチオンと反応することで余計な部分が外れ、薬が活性化して本来の力を発揮します。健康な細胞では、グルタチオンが少ないため反応が起こらず、余計な部分のガードで副作用を抑えることができるのです。

ものづくりの薬学が未来を開く

この研究の対象は、がんの治療薬に限りません。体の中で起きている異常は、見方を変えれば一種の科学的なサインです。がん細胞はグルタチオンが過剰に存在する、糖尿病では血糖値が上がるなど、体内の変化を「刺激」ととらえ、そこに反応する仕組みを薬に組み込む発想は、あらゆる病気に応用できる可能性があります。病気で苦しむ人を助けることを目的としながら、世の中にまだないものをゼロから生み出すという、「ものづくり」にもつながる薬の研究が、医療の未来を少しずつ変えていこうとしています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

城西大学 薬学部 薬学科 准教授 関 智宏 先生

城西大学 薬学部 薬学科 准教授 関 智宏 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

薬系分析、物理化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

薬学とひと口に言っても、さまざまな研究手法があります。私は、世の中にまだないものを生み出す「ものづくり」としての薬学に魅力を感じて、研究に励んでいます。ゼロからイチを生むために思考することが楽しいと思えるなら、特に向いている分野です。まだ大学で研究するイメージがつきにくいかもしれませんが、例えば薬がなぜ全身に広がり、やがて体外に出ていくのかは、高校で学ぶ物理の法則で説明できます。高校までの学問と大学の研究がどうつながるのか、ぜひ楽しみながら探ってください。

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