がん細胞の特性を逆手に 副作用を抑える薬のデリバリー術

薬の副作用はなぜ起きる?
風邪薬を飲んだとき、眠くなった経験はありませんか? それは副作用と呼ばれるもので、薬の成分が効かせたい場所だけでなく、全身に広がってしまい、意図しない場所にも作用することで起こります。抗がん剤など強い薬になると、副作用もさらに強烈です。がん細胞を攻撃するほどの力が薬にあるため、健康な細胞にも大きなダメージを与えてしまいます。場合によっては、薬の投与をやめなければならないケースが出るほど、副作用は重大な問題なのです。
あえて「余計な部分」を付ける
副作用を減らすため、薬を必要な場所にだけ届ける仕組みとして「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」が研究されています。例えば、一部のがん細胞にはグルタチオンという物質が大量に存在します。グルタチオンはもともと体を守るための物質ですが、増えすぎることで、抗がん剤の効き目を弱める方向に働いてしまいます。
DDSではこの特性を逆手に取り、薬にあえて「余計な部分」をくっつけて投与します。投与時に薬はまだ眠っている状態で、体に害を与えません。がん細胞の中に入り、グルタチオンと反応することで余計な部分が外れ、薬が活性化して本来の力を発揮します。健康な細胞では、グルタチオンが少ないため反応が起こらず、余計な部分のガードで副作用を抑えることができるのです。
ものづくりの薬学が未来を開く
この研究の対象は、がんの治療薬に限りません。体の中で起きている異常は、見方を変えれば一種の科学的なサインです。がん細胞はグルタチオンが過剰に存在する、糖尿病では血糖値が上がるなど、体内の変化を「刺激」ととらえ、そこに反応する仕組みを薬に組み込む発想は、あらゆる病気に応用できる可能性があります。病気で苦しむ人を助けることを目的としながら、世の中にまだないものをゼロから生み出すという、「ものづくり」にもつながる薬の研究が、医療の未来を少しずつ変えていこうとしています。
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