医療的ケア児や難病の子どものために、薬剤師ができること

医療的ケア児や難病の子どものために、薬剤師ができること

薬の使い方で子どもと家族の生活を支える

「人工呼吸器」や「経管栄養」といった医療的な機器やケアを日常的に必要としながら、自宅で生活している子どもたちがいます。「医療的ケア児」と呼ばれるこの子どもたちは、簡単に外出できず、家族も家から出られなくなってしまうことが少なくありません。
学校に通うことすら難しい場合がありますが、学校にいる時間帯に医療的ケアや薬物療法をしなくて済むよう調整できれば、教室に通えるようになることもあります。そのために、薬の使い方を子どもの生活リズムに合わせて調整するのも、薬剤師の役割です。

子どものための薬がない?

子どもの薬にかかわる問題は、医療的ケア児に限った話ではなく、腎移植を受けた子どもや小児がんの子どもなど、重い病気を抱える子どもたち全般に共通します。特に難病では大人の薬はあるのに子ども用の薬がないことも珍しくなく、その場合は薬剤師が大人用の薬を加工するなど、工夫して対応しています。
大人と違って、子どもの臓器は発達途中にあります。薬の分解が異常に速く、効果が十分に出ないこともあれば、逆にうまく分解できずに体に薬が残り、効き過ぎてしまうこともあります。しかも治療域が非常に狭い薬は、少し量を間違えるだけで危険になりかねません。こうした予測しづらさが、子どもの薬の開発を難しくしている一因です。

見えていないニーズを可視化

このような問題は、長らく見過ごされてきました。負担が大きい家庭ほど日々のケアに追われ、声に出して訴える余裕はありません。そのため実態がデータとして現れず、その子たちを考慮しないまま社会制度がつくられてきたのです。
そこで今、ビッグデータを解析し、これまでに見えていないニーズを可視化する研究や、難しい調剤にも対応できる「小児専門薬剤師」を増やすための認定制度づくりが進められています。多くの人を巻き込みながらこうした取り組みを積み重ねていくことが、子どもたちが安心して薬を使える社会への確かな一歩になるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

帝京大学 薬学部 薬学科 准教授 川名 三知代 先生

帝京大学 薬学部 薬学科 准教授 川名 三知代 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

薬学、医療薬学、社会薬学

先生が目指すSDGs

メッセージ

薬局の研究でも、子どもの薬の研究はまだほとんど手つかずの領域で、研究テーマはいくらでもあります。挑戦すればするほど社会の役に立つ実感が得られます。薬剤師の役割は今や薬の調整だけでなく、服薬指導や服薬支援をするようになったり、医療の担い手として位置づけられるようになったりと、この数十年で大きく広がってきました。今後も社会の変化とともに、その役割は変わり続けていくはずです。興味があるなら、その変化をただ待つのではなく、自分自身の手で変えていく気持ちを持って一歩を踏み出してみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

帝京大学に関心を持ったあなたは

医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部33学科を擁する総合大学です。医学部・薬学部・医療技術学部を擁する板橋キャンパスの最大の特長は、医学部附属病院が隣接している点。学生は救命救急センターやERなど最先端の医療を、実習を通し体感できる場ともなっています。都心へのアクセスも良好であり、キャンパス最寄りの十条駅から池袋駅へ7分程度で行けますので、ショッピングなども気軽に楽しめます。