生薬を治療の選択肢に 古い知識を正す品質評価

その成分は本当?
自然由来の薬などを扱う生薬学・天然物化学の研究アプローチは、植物栽培の研究や、生薬の歴史的ルーツをたどる研究、植物から新しい有効成分を抽出するスクリーニング研究など多岐にわたります。そのうちの一つに「品質評価」があります。
生薬を配合した漢方薬は古代から使われてきました。伝統と歴史のある生薬について、「この生薬には○○という成分が含まれていると言われているが、本当か」などと、生薬が薬として安全かつ有効かどうか、古い知識を問い直して検証するのが品質評価です。
常識が間違っていることもある
せきや胃の不調の改善に用いられる漢方薬に含まれる生薬「半夏(ハンゲ)」には、ドーピング禁止薬物に指定されているエフェドリンがごく微量含まれていると言われています。この情報は1980年代の論文に基づきますが、現代の高精度な分析機器で検査すると検出されません。胃腸を整える「丁子(チョウジ)」にもドーピング禁止薬物が含まれると言われていますが、こちらも検出されませんでした。丁子はクローブともいい、カレーに入っているメジャーな香辛料でもありますが、実際にアスリートがカレーを食べたせいで問題になった例はありません。
昔の分析は適切ではなく、本来含まれるはずのない異物の混入(コンタミネーション)があったのではないかと考えられますが、一度広がった情報を覆すのは難しく、誤った知識が残り続けています。「悪魔の証明」という言葉があるように、存在しないことを証明するのは困難です。疑わしいことは避けるのが無難だと考えるアスリートは、これらの生薬を避けるほかないのです。
正確なエビデンスを構築する
生薬の品質評価は、誰もが安心して薬を飲める環境を整えることにつながります。科学的根拠がないにもかかわらず、生薬の使用が制限されることがあってはなりません。古い知識を再検証し、正確なエビデンスを構築することで医療の質を高め、患者がより多くの治療選択肢を得られるようにする研究が続いています。
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日本大学 薬学部 薬学科 専任講師 矢作 忠弘 先生
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