イルカは音で世界を見る 音声と行動から知られざる生態に迫る

超音波の出し方で認識がわかる
海の中は陸上よりも視界が限られています。特に深い場所では光が届きにくく、目だけで周囲の状況を把握することは簡単ではありません。そこでイルカは「エコロケーション」と呼ばれる能力を使います。超音波を出し、反射した音を聞くことで周囲の様子を調べるのです。
人間が景色をなんとなく眺めたり、気になるものをじっと見つめたりするように、イルカは音を使って周囲の環境を把握しています。普段はまばらに音を出し、何か気になるものを見つけると一気に音の間隔を短くするなど、音の出し方からイルカが「周囲をどう認識しているのか」を推測できることもあります。
観察で予想外の結果も
イルカの研究では音の分析が重要ですが、音だけではわからないこともあります。例えば、音を活発に出す時間帯を調べることで、夜行性か昼行性かがわかりますが、イルカたちが何をしているかまではわかりません。行動の観察と組み合わせることで、生態を深く理解できます。
実際の観察では、「新しい環境では周囲を音で探るだろう」と予想されたイルカが、まったく音を出さなくなる場面も確認されました。予想外の結果から、「危険を感じたときは静かになる場合がある」という新たな発見につながったのです。
音の研究で海の生き物を保護
こうした研究は、海の生き物を守ることにも役立ちます。例えば、日本近海に生息する絶滅危惧種のスナメリは、水中で直接観察することが難しいため、超音波に関する調査が生態を知る重要な手掛かりになります。いつどこで活動しているのか、どのような環境で暮らしているのかを知ることで、スナメリを守り、共存するための環境づくりにつながります。
近年は録音機器や解析技術、AIなどが発達し、深海に生息するアカボウクジラなどこれまで調査が難しかった生き物の研究も進めやすくなりました。音と行動を組み合わせて分析することで、海の生き物がどのように世界を認識しているのかが少しずつ明らかになっています。
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人間環境大学 総合環境学部 フィールド自然学科 准教授 吉田 弥生 先生
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