講義No.16529 生物学

イルカは音で世界を見る 音声と行動から知られざる生態に迫る

イルカは音で世界を見る 音声と行動から知られざる生態に迫る

超音波の出し方で認識がわかる

海の中は陸上よりも視界が限られています。特に深い場所では光が届きにくく、目だけで周囲の状況を把握することは簡単ではありません。そこでイルカは「エコロケーション」と呼ばれる能力を使います。超音波を出し、反射した音を聞くことで周囲の様子を調べるのです。
人間が景色をなんとなく眺めたり、気になるものをじっと見つめたりするように、イルカは音を使って周囲の環境を把握しています。普段はまばらに音を出し、何か気になるものを見つけると一気に音の間隔を短くするなど、音の出し方からイルカが「周囲をどう認識しているのか」を推測できることもあります。

観察で予想外の結果も

イルカの研究では音の分析が重要ですが、音だけではわからないこともあります。例えば、音を活発に出す時間帯を調べることで、夜行性か昼行性かがわかりますが、イルカたちが何をしているかまではわかりません。行動の観察と組み合わせることで、生態を深く理解できます。
実際の観察では、「新しい環境では周囲を音で探るだろう」と予想されたイルカが、まったく音を出さなくなる場面も確認されました。予想外の結果から、「危険を感じたときは静かになる場合がある」という新たな発見につながったのです。

音の研究で海の生き物を保護

こうした研究は、海の生き物を守ることにも役立ちます。例えば、日本近海に生息する絶滅危惧種のスナメリは、水中で直接観察することが難しいため、超音波に関する調査が生態を知る重要な手掛かりになります。いつどこで活動しているのか、どのような環境で暮らしているのかを知ることで、スナメリを守り、共存するための環境づくりにつながります。
近年は録音機器や解析技術、AIなどが発達し、深海に生息するアカボウクジラなどこれまで調査が難しかった生き物の研究も進めやすくなりました。音と行動を組み合わせて分析することで、海の生き物がどのように世界を認識しているのかが少しずつ明らかになっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

人間環境大学 総合環境学部 フィールド自然学科 准教授 吉田 弥生 先生

人間環境大学 総合環境学部 フィールド自然学科 准教授 吉田 弥生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

動物音響行動学、海棲哺乳類学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生の頃は獣医師をめざしていましたが、その夢は実現しませんでした。それでも動物に関わりたいという思いを持ち続け、学びを重ねてきました。その結果、イルカの研究を仕事にでき、南米でのフィールドワークを始める機会にも恵まれました。何かを「好きだ」と思う気持ちは、大きな原動力になります。やりたいことを口にし、挑戦を重ねることで、思いもよらないチャンスが巡ってくることがあります。すぐに結果が出なくても、あなたの興味や好奇心を大切にしながら行動を続けてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

人間環境大学に関心を持ったあなたは

人間環境大学は、「いのち」、「こころ」、「環境」の未来を創造するために、知識と技能、そして自ら考えて行動する力を養い、それにかかわる実践力を身につけた人材を輩出しています。人を知り、人に学び、人のためになる自分へと成長できる大学、それが人間環境大学です。2022年4月、新たに愛媛県松山市に「総合心理学部」、愛知県岡崎市に「心理学部」「環境科学部」が開設、5学部7学科の大学となり、ますます個性あふれる特色豊かな大学へと進化します。