タンパク質の構造から探る、生物と金属の切っても切れない関係

タンパク質の構造から探る、生物と金属の切っても切れない関係

生物の生存に不可欠な鉄

体にとって重要な栄養素は、炭水化物や脂質、タンパク質などがよく知られていますが、実は微量の金属も生きていくためには欠かせません。その代表例が鉄で、さまざまなタンパク質の働きを支えています。一例として、赤血球の中にあるヘモグロビンの構成成分として、体中に酸素を運ぶ中心的な役割を果たしています。

病原菌が鉄を奪い取る仕組み

生きるのに鉄が不可欠なのは、微生物も同じです。人に感染した病原性細菌は、自身が増殖するために必要な鉄を、人の赤血球を壊して放出されたヘモグロビンから奪い取ります。ヘモグロビンの鉄は、有機分子と結合した「ヘム」と呼ばれる鉄錯体として存在しています。病原菌はこのヘムを奪うのです。
コリネバクテリアという細菌グループは、細胞膜の外にあるタンパク質でヘモグロビンからヘムを抜き取りますが、そのタンパク質の構造解析が行われています。研究により、タンパク質がヘムを抜き取り、バケツリレーのように次のタンパク質に渡して輸送する仕組みが明らかになりつつあります。
こうしたタンパク質の構造解析には、X線結晶構造解析という方法が用いられます。目的のタンパク質を結晶化してX線を照射し、回折したX線を測定・解析して構造を計算するというものです。顕微鏡サイズの結晶に、周囲が1km以上ある大型放射光施設「SPring-8」で作り出した強力なX線を照射します。

生物と金属の進化

生物は進化の過程でどのように金属を使うようになったのでしょうか。微生物の中には、酸素がなかった原始の地球で繁栄し、鉄を含んだ特殊な酵素を作っていたバクテリアの生き残りもいます。酸素が豊富な現在の環境で、どのような仕組みで嫌気性の酵素を作っているのか、進化に焦点を当てた研究も行われています。
また応用として、遺伝子組換えを行って人に有用な薬などを微生物に生産させる場合、金属不足による生産効率の低下が課題の一つです。微生物が金属を利用する仕組みの解明は、創薬や微生物の有効利用につながると期待されます。

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石川県立大学 生物資源環境学部  准教授 村木 則文 先生

石川県立大学 生物資源環境学部 准教授 村木 則文 先生

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構造生物化学、蛋白質科学、応用微生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が取り組んでいるタンパク質の構造解析では、タンパク質を増やすために遺伝子組換えした大腸菌などを使うため、生物学の知識が必要です。タンパク質を扱うには化学、結晶化してX線で測定するのは物理学、測定データを解析してタンパク質の構造モデルを作る計算は情報科学と、高校で学ぶさまざまな科目に関わりがあります。もちろんすべてを網羅するのは無理ですが、自分が選択している科目以外にも関心を向けるようにしましょう。意外なことが後で役立つものです。好奇心を持ち、知ろうという意欲を大切にしてください。

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