母親になるのは「育ち直す」こと 出産と子育てを支える母性看護学

女性の価値観を大きく変える体験
母性看護学は、女性本人の意思と人権を尊重しつつ、子ども時代から老年期まで一生にわたる健康と幸福を支えていく分野です。特に出産は、女性の人生を変える大きな体験だと言えます。新しい生命、新しい家族を授かるだけではありません。たとえ本人が親からの愛情に恵まれずに暮らしてきたとしても、助産師や看護師の温かいケアを受けることで、もう一度母親も子どもと一緒に育ち直すことができます。出産は、女性が自分の健康や生活を見直し、自身の価値に気づく、大切な機会でもあるのです。
気になる母親を救うのは誰?
出産の現場である病院の産科外来では時々、気になる妊婦が見受けられます。赤ちゃんのことを考えたら禁煙するのが最善なのに、いつもたばこの匂いをぷんぷんさせている女性、あるいは順番を待っている間もずっとノートパソコンで仕事をしている疲れた顔の女性です。彼女たちは赤ちゃんや自分を大切にできているのでしょうか。そのまま放っておくと育児放棄や子どもへの虐待につながりかねません。
そのような親子を見つけて支援につなげるのが助産師や看護師の役割の1つです。助産師や看護師は、親子の情報を市町村の保健センターや福祉課、児童相談所へ提供し、継続して見守ってもらうように連携しています。妊産婦の出産と子育てをきちんと支援できれば、子どもへの虐待も予防できるでしょう。
身近なデートDV気づいてる?
高校生にとって出産よりももっと身近な「異性との交際」を、母性看護学の視点で考えてみましょう。例えば、交際相手のスマホを勝手にチェックする行為、当然のように相手に食事をおごらせる行為、「今、どこにいるの?」とLINEを大量に送りつけて相手を監視‧束縛する行為などは「デートDV」にあたります。このような、相手の人権を侵害するような交際を将来の幸せにつなげることは難しいでしょう。デートDVに気づくことは、自分自身やパートナーの人権を守ることであり、それはいずれ一生にわたる健康と幸福につながることなのです。
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姫路大学 看護学部 看護学科 教授 唐田 順子 先生
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