スマホの電池は鉛筆の芯から? 黒鉛層間化合物のすごさとは

スマホの電池は鉛筆の芯から? 黒鉛層間化合物のすごさとは

鉛筆の芯とリチウムイオン電池

鉛筆の芯に使われている「黒鉛(グラファイト)」は、炭素が原子1個分の厚みでシート状につながった「グラフェン」が、分子間力で緩く層状に重なった物質です。鉛筆の場合、芯が押し付けられることで層がはがれ、紙の上に黒鉛が残り、文字や絵を描くことができます。
この黒鉛の層の間に別の物質を入れ込むことで黒鉛の性質を変える「インターカレーション」という技術があります。こうしてできる黒鉛層間化合物(GIC)は、黒鉛とその層間に入った物質の間で電子のやりとりが起きるので、元の黒鉛よりも電気伝導性が良くなります。インターカレーションの仕組は、スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池にも利用されています。リチウムイオンが黒鉛の層の間を出入りすることで、充電・放電を繰り返すのです。

銅に代わる配線材料を作る

現在、GICの電池以外への応用も研究されています。例えば、半導体部品などの配線に使われている銅に代わる、軽くて高い電気伝導性を持つGICの開発です。
電子部品の配線材料として使うためには、常温の大気中でも長期間、安定した性質を保つ必要があります。しかしGICには、層の間に入れ込んだ物質(ゲスト)が抜けたり、空気中の水分や酸素と反応して劣化したりしやすいという課題があります。そこで、黒鉛の構造を工夫してゲストを安定に保つ方法や、大気中でも安定なゲストを探す研究が進められています。

超伝導性を持つGIC

黒鉛の層の間に入れるゲストによって、GICにはさまざまな性質や機能が現れます。例えば、アルカリ土類金属であるカルシウムをゲストとしたGICは、超伝導性を示します。また、これまで黒鉛層間に入りにくいとされてきたナトリウムに注目して、その理由を調べるとともに、ナトリウムを含む複数の物質を組み合わせた新しいGICの開発も進められています。入れる物質やその組み合わせによって、GICにはまだ知られていない新たな機能が生まれる可能性があります。

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東京工芸大学 工学部 工学科 教授 松本 里香 先生

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無機材料化学、電気電子工学

メッセージ

高校生のときには、まだ知らない学問分野がたくさんあると思います。私自身、普通高校にいたころは、工学部で何を学び、どのような研究をしているのかよく知りませんでした。大学を選ぶときには、大学のイメージや偏差値だけでなく、そこで何を学び、どんな研究ができるのかもぜひ調べてみてください。
研究では、成績や知識だけでは測れない力も大切です。特に実験系の研究では、粘り強さに加えて、手先の器用さや実験を丁寧に進める力も重要です。いろいろな分野を知る中で、自分が面白いと思えるものを見つけてほしいと思います。

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東京工芸大学は 1923(大正 12)年に創設された「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、創設当初から「テクノロジーとアートを融合した無限大の可能性」を追究してきました。
工学部と芸術学部の 2 学部を有し、工学部は 1 年次に写真とデザインを学ぶことで芸術的なセンスを身につけ、芸術学部はメディアアートを通して工学的な技術を身につけるという、一見相反する両分野を融合させた教育を実践しています。