どんな写真も価値がある 個人と時代を重ね合わせて表現

どんな写真も価値がある 個人と時代を重ね合わせて表現

スマホの写真も未来の資料に?

スマートフォンが普及した現代で、スマホカメラを使った写真撮影は日常の一部となっています。友達とのツーショットや教室での一コマ、修学旅行の光景を映した数々の写真は、自分や周りの人にとって大切な思い出です。
そして時間がたつと、それらの写真は時代を記録した資料になるかもしれません。例えば、少し前に流行したファッションや髪形、街の様子などは、当時のスナップ写真によって見ることができます。また、古い時代に土産物として売られていた街の写真も、今では当時の暮らしを知る貴重な歴史資料となっています。写真は、時代を写した記録でもあるのです。

価値は技術だけで測れない

写真史では、有名な写真家の作品やカメラ、フィルムなどの技術が中心に語られがちです。しかし美術史家のジェフリー・バッチェンは、世界に存在する写真の多くは、芸術作品ではないという点に注目しました。家族写真、記念写真、スナップ写真、証明写真など、写真の専門家ではない人々が撮ったり撮られたりした写真にも大きな意味があります。例えば、戦地へ向かう恋人の写真はペンダントに入れて大切に持つこともありました。それは美術館に飾られる芸術作品ではないかもしれませんが、その人にとってはかけがえのない写真です。写真は、技術や芸術性だけでは価値を測れません。

個人史と時代の記録を重ね合わす

こうした写真の特性を生かして作品をつくる表現活動があります。ある日の新聞の上に、人物のポートレートや、その人にゆかりのあるものを置き、一つの写真として撮影します。新聞には、社会的な出来事が記録されており、人物の写真や身近な持ち物には、その人だけの記憶が刻まれています。それらを重ねることで、社会の歴史と個人の歴史が同じ時間の中で起きていたことが見えてきます。
写真は、目の前のものを写すだけではありません。個人の記憶と時代の記録を結びつけ、未来へ伝えるメディアでもあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京工芸大学 芸術学部 写真学科 教授 勝倉 崚太 先生

東京工芸大学 芸術学部 写真学科 教授 勝倉 崚太 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

芸術学、写真学

メッセージ

写真は、あまり難しく考えすぎず、気軽に楽しんでほしいです。写真部などで本格的に取り組んでいる人は、技術を磨くことも大切ですが、上手に撮ろうと構え過ぎなくてもいいです。高校の制服を着ることや、教室で友達と過ごすことは、人生の中ではほんの短い期間です。何でもないと思っている日常も、あとから振り返ると大切な記憶になっていることがあります。自分と周りの人だけが楽しめればいい、という気持ちでも構いません。今しか撮れないものを、ぜひたくさん残してください。

東京工芸大学に関心を持ったあなたは

東京工芸大学は 1923(大正 12)年に創設された「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、創設当初から「テクノロジーとアートを融合した無限大の可能性」を追究してきました。
工学部と芸術学部の 2 学部を有し、工学部は 1 年次に写真とデザインを学ぶことで芸術的なセンスを身につけ、芸術学部はメディアアートを通して工学的な技術を身につけるという、一見相反する両分野を融合させた教育を実践しています。