タイパがすべてじゃない! 「使ってなじむ心地よさ」の研究

長く使う製品の「使い心地」
身の回りの日用品の評価は、材質・大きさ・機能といった「仕様」で判断されるだけでなく、好み・使い心地など、人の感性に左右されます。その人間の感性を分析し、ものづくりに生かす学問を「感性工学」と言います。
中でも、寝具や椅子、衣類など、長期にわたって使うものは、時間とともに製品が変形し、なじむことによって使い心地が変化します。最近ではタイパ(タイムパフォーマンス)、つまりいかに短時間でメリットを享受できるかが重視されていますが、時間をかけてこそ「心地よさ」というメリットが生まれるものもあります。そうした、「なじむ心地」の研究が行われています。
主観と客観の両面を分析
感性工学では、主に主観的な感じ方をユーザーに答えてもらう手法が採られてきましたが、最近では製品の物理的な性質や心拍数などの生理現象を測定して、客観的なデータに基づいた分析も行われています。心地よいという主観が最も大切ではありますが、データを取ることで、説得力やものづくりでの再現性が高まります。長期にわたる製品の物性変化をデータで蓄積し、主観との関連を明らかにすることが大切です。
例えば、椅子は使い慣れてくると、使う人の着座の動作が変わることがわかっています。またランドセルも、子どもの成長に合わせて少しずつ変形しています。背中とランドセルの間にセンサを入れて計測したところ、使い込むほどに接触面が変わってくることがわかりました。このように、人の体形や動作と製品の変形の相互作用によって「なじむ心地よさ」が生まれているのです。
感性工学で新たな商品を
今、感性工学を寝具に生かす研究が注目されています。古いものを買い替えるときに、「自分に合った心地よさ」を新品に付け加えるという発想です。寝具は毎日使うことで変形しやすいですが、ちょうどその人に合った形に変形したときの心地よさというものもあります。こうした技術が実現できれば、新しいタイプの寝具が生まれることが期待されます。
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