「感動する音」に共通するのは? 人の感性を工学的に分析

人の感覚をデータに
音楽を聴いていると、胸がジーンとしたり鳥肌が立ったりすることがあります。しかし、なぜその音や歌声に心を動かされるのかは、実はよくわかっていません。人によって好きな音楽も違えば、感動も異なるため、「良い音」は感覚的に語られがちです。そこで役に立つのが、人の感性そのものを評価対象にする「感性工学」の視点です。「心に響く音」を工学的に分析し、データでとらえる研究が進められています。
高評価の歌声の共通点
研究では音楽が感動を引き起こす要素を、拍子や和音などの「楽曲的特徴」、ビブラートや抑揚などの「発生的特徴」、周波数成分などの「声質的特徴」、会場の反響などの「環境的特徴」の4つに分解し、それぞれが人の感情にどう影響を与えるのかを実験しました。被験者にはさまざまな歌声を聴かせて、「心に響く」「癒やされる」「鳥肌が立つ」といった印象を評価してもらいました。
注目されたのが、「歌唱フォルマント」と呼ばれる2.5~3.5kHz付近の周波数帯域でした。これは人の耳に届きやすい声の成分だと考えられています。オペラ歌手の歌声を分析したところ、歌唱フォルマントの音圧レベルが高い歌手ほど高評価を得る傾向が見られました。さらに、もともとは評価の低かった歌声でも、歌唱フォルマントの帯域を人工的に強調すると、聴いた人の評価が上がることが確認されました。つまり、人が感動する音には共通する特徴があることがわかってきたのです。
心を動かす商品づくりも
感性工学の研究対象は音楽だけではありません。地域に伝承される和太鼓の「響きの良さ」を分析したり、小中学校の教室や音楽室、体育館の音環境を調査したり、ユズの香りやワインのおいしさを評価したりと、人が「心地よい」「心を動かされる」と感じることを幅広く研究しています。感覚や経験に頼ってきたものをデータとして分析することで、より快適な空間づくりや地域文化の継承、新しい商品開発などにつながると期待されています。
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宇都宮大学 データサイエンス経営学部 データサイエンス経営学科 教授 長谷川 光司 先生
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