染料や薬の成分を生み出す唯一無二の植物の仕組みを解明

染料や薬の成分を生み出す唯一無二の植物の仕組みを解明

特有の「代謝産物」を作り出す

生き物の細胞内では、いろいろな酵素を使って、一つの物質を次の物質へと合成・分解していくメカニズムがあります。その過程で生まれる物質を「代謝産物」と呼びます。
植物にもさまざまな代謝産物がありますが、その植物にしかない特有の代謝産物を持つものがあります。例えば、トウガラシの辛み成分である「カプサイシン」はトウガラシにしか作れません。そうした物質の多くは外敵から身を守るための毒性を持つものが多くあります。

有用な成分の合成経路を解明

「ムラサキ」という植物の根の周りには「シコニン」という紫色の物質があります。シコニンは日本では古くから染料や薬として使われてきました。シコニンは細胞内で合成された後、細胞の外に出され、人間でいえば皮膚の上にくっついているような状態で蓄積されています。そのようにして、ムラサキ自身の根を土中の微生物などの外敵から守っていると考えられています。
シコニンがムラサキの細胞中でどのような経路を経て合成されるのか、日本の研究者たちが長年研究を重ねた結果、その解明にあと一歩というところまで来ています。「ムラサキ」が特定の酵素を進化させてシコニンを生み出す合成経路を構築していることがわかってきました。

人工合成や品種改良の道を開く

この研究では、ムラサキの体内にあるさまざまな物質を取り出して、似た構造を持つものを比較することで経路が推測されました。また、ゲノム解析でわかった特定の酵素を作る遺伝子から、その酵素が合成経路のどこで働いているかを割り出しました。
ムラサキのほかにも、コケ植物が持つ珍しい化学構造を持つ成分の合成経路の研究が行われています。このように合成経路が解明できると、植物の有効成分を人工合成できる可能性が開けます。また、その物質を生み出す酵素の遺伝子をゲノム編集することにより、有用な成分をたくさん生み出せるように品種改良をすることも可能になります。

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信州大学 理学部 理学科 生物学コース 准教授 髙梨 功次郎 先生

信州大学 理学部 理学科 生物学コース 准教授 髙梨 功次郎 先生

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植物代謝学

メッセージ

コスパ、タイパが求められる時代ですが、無駄に思えることも経験してみましょう。最短経路を突っ走らないといけない場合もありますが、30代以上になると、寄り道の多さが人生の豊かさに関わってきます。やってみたら食わず嫌いだったとわかることもあるものです。私自身、高校や大学のときに休学して留学したり旅行したりしたことで、世界が広いこと、自分の常識が通じない世界もあることを学べました。また、最初の研究室は有機合成・分析を行う研究室でしたが、その知識が今の生物学の研究にも大いに役立っています。

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