赤外線カメラで劣化診断 社会のインフラを守る「非破壊検査」

見えない傷を見つける
橋やビル、自動車など、私たちの身の回りの構造物は時間とともに劣化し、やがて壊れていきます。壊れる前に劣化状況を調べ、修繕などの対処を行うことが重要です。しかし、内部の劣化を調べるために壊すわけにはいきません。そこで活躍するのが、壊さずに内部の状態を調べる「非破壊検査」です。方法の一つに、赤外線カメラを使って温度の違いから異常を見つける方法があります。例えば、建物の外壁にあるタイルの浮き具合や剥がれは、対象箇所の温まり方や冷え方の違いとして検出可能なのです。
誤差を減らして金属の検査も可能に
赤外線カメラで温度を測定する際に問題になるのが、反射光が起こす誤差です。そこで、「偏光」を活用して不要な光の影響を除去する手法が開発されました。赤外線カメラの前に偏光フィルターを取り付けると、余分な反射光をカットし、検査対象が直接発している熱の情報を正確にとらえることができます。これにより精度が向上し、これまで困難だった金属製品の欠陥検査も実現しつつあります。
さらに、昼と夜の温度変化を利用した手法も研究されています。建物の壁に剥離がある部分は、壁が薄くなっているため、昼間は太陽熱で温まりやすく、夜間は逆に冷めやすくなります。一方、表面の汚れは昼も夜も温度が高いままという違いがあります。この特性を生かし、昼と夜に撮影した2枚の赤外線画像を比較するだけで、剥離を高精度に検出できる技術が開発されています。
検査の標準化を
赤外線カメラやドローンが安価になり、手軽に検査できるようになった一方で、適切な使用方法を理解せずに検査を行う事例も増えています。検査方法の開発に加え、検査条件の標準化を進め、誰でも精度の高い検査ができる技術を確立することも重要です。こうした研究は、派手さはないものの、社会インフラの安全を守る基盤となります。ものは必ず壊れるからこそ、状態を正しく見極める技術が、私たちの暮らしを支えているのです。
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